2015年7月27日以前の記事
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光のDeFi、闇のDeFi 1週間で14億円を手にした”寿司”スワップの芸術的手法(3/4 ページ)

暗号資産において2020年のトピックは分散型金融(DeFi)だ。夏以降、DeFi関連のトークンが急速な盛り上がりを見せ、DeFiに費やされる資金も急速に増加している。一方で、この盛り上がりで思い出すのは、17年に大ブームを巻き起こしたICO(イニシャル・コイン・オファリング)だ。1週間で、コピーしてトークンを売り出し、売り抜けるという、芸術的な手法を取ったスシ(寿司)スワップを例に、DeFiのブームの光と闇を探る。

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初期投資化と後追い投資家

 これが示す教訓はなんだろうか。1つはアイデア次第でかつてないスピードで資金調達が可能になったことだ。スシスワップでは、既存のサービスのコードを基本的にコピーしながら、独自トークンの発行と盛り上がる仕組みを取り入れることで、一瞬にしてばく大なトークン価値を作り出した。

 「発想力次第でどんな商品設計もできる。出せば買い手がいて、ウハウハの世界だ」(橋本氏)

 従来であれば、こうしたトークンも取引所に上場して初めて売却できた。ところがユニスワップのような分散型取引所がある現在、誰かが通貨ペアを預けさえすれば、取り引きが可能になる。

 2つ目は、こうしたDeFiの盛り上がりに向き合う暗号資産投資家の二分化だ。ユニスワップやスシスワップの仕組みを理解し、自ら通貨ペアを預けることでスシトークンを入手した投資家は、着実な利益を上げた。一方で、「スシトークンというものが猛烈な値上がりをしているらしい」という話を聞いて、スシトークンを買った投資家は大損失となっている。

 一時12ドルまで上昇したスシトークンは、設立者の売り抜けの報を受けて急落。9月6日には1.05ドルまで下落した。


登場からわずか数日でスシトークンは大ブームとなり、その後、急落した

 橋本氏は、DeFi関連の投資ではトークンを買うのは危険だと警鐘を鳴らす。「DeFiトークンの開発者はタダでトークンを生成しており、DeFiサービスの利用者もタダでトークンがもらえるわけだから、開発者と一緒にタダで手に入れて売る側に回ることが重要だ」。17日にも、初期からユニスワップに流動性をプールしていた人々に、独自トークンが配られた。

 一方で、DeFi関連のトークンをもらうハードルは高くなっている。DeFiブームに伴うイーサリアムの取引コストの増大だ。イーサリアムは、取引量が増大するにつれてコストが増加する仕組みになっている。それがDeFiのブームで高騰している。融資サービスのDeFiコンパウンドなどでは、手数料だけで1万円、2万円がかかるようになってしまった。

 暗号資産の手数料は金額によらず一律なので、少額の取り引きではコスト負けしてしまう。橋本氏は「最低でも500万円が必要。300万円はギリギリだ」と、DeFi参加のハードルの高さを話す。さらに、高い手数料を払ったほうが優先して処理される仕組みのため、1億円、2億円という資本が入ってきたら、数百万円では全く勝負にならないとも。

 過激なマネーゲームの現状がここにある。

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