アフターコロナで問われる「雇用と外注の境界」、海外雇用の時代到来か:専門家のイロメガネ(4/6 ページ)
コロナ禍を受けた緊急事態宣言以降、働き方は大きく変化変した。リモートワークの急拡大による通勤不要を好意的に捉えた従業員も多いだろう。だが「働き方の変化」は、経営者側から見れば「雇い方の変化」となる。アフターコロナで雇用はどう変わるのか?
雇用と外注の境界線が曖昧になる
雇用の話がいつの間にか外注の話に変わっていると思われたかもしれないが、リモートワークによって会社の外で仕事が行われれば、状況は実質的に外注と同じだ。
仕事を会社の内部で行うか外部で行うか、社員が行うか外注先が行うか。これらは、従来ハッキリと区別されていたが、在宅勤務で可能な仕事は外注でも可能になり、そうなれば場所にこだわる必要もない。
ここで言いたいのは、全ての仕事が海外に外注されるということではなく、リモートワークによって雇用と外注、オフィスと自宅、都市部と地方、国内と国外といった、これまで明確に存在していた境界線が曖昧になることを意味する。
さらに、近年急激に増えている副業の話も加えると、ある人が本業の仕事をリモートワークで行って、副業も自宅で行うというケースが出てくる。そうなると複数の取引先があるフリーランスと同じで、「本業」は売上の割合が大きい取引先くらいの扱いだ。つまりリモートワークの普及は、働く側も雇われる意味を考えるキッカケとなるだろう。
すると、これまでの常識だった、企業の根幹を成す重要な仕事は、軽々しく外注に出されないはずだ、地方や海外でリモートワーカーに任せるわけがない、という思い込みは勘違いということになってくる。
これまでも税理士や社労士、弁護士など、重要だが社内では片付けられない仕事は、大手から中小企業まで日常的に、外部の専門家に依頼されている。
「在宅勤務で可能な仕事は外注が可能、外注が可能なら場所にこだわる必要なんてない」
この考え方を進めていくと、経営者は「社員を通勤させる意味は何か?」「外注でも可能な仕事を、あえて社員を雇って行う意味は何か?」と、雇用の意味や必然性を考えざるを得なくなる。
企業は、業績が悪化しても軽々しく解雇はできず、社会保険料の負担も重い。雇用契約を結ぶことで社員の労働力を自社の業務へ独占的に使えるメリットはあるが、多数の社員を抱えるリスクやデメリットも当然ある。
リモートワークで選択肢が広がったのは従業員だけでなく企業側も同様ということだ。
関連記事
- 「としまえん売却」と「GAFAMの東証一部超え」から見えるコロナ後の世界
「としまえん」の売却が今年2月に伝えられた。また1月には時価総額において「GAFAM」が東証一部全体を超えた。さらに、これら2つのニュースが示す新時代への移行は、コロナで一気に加速している。ここでは、リアルな土地から「新大陸の土地」へのビジネス主戦場の移行、コロナによる移行の加速、またコロナ後の世界を見ていきたい。 - コロナで変わる、桃鉄・シムシティ的な都市開発
TVゲーム「桃太郎電鉄」や「シムシティ」は、戦後日本の都市開発を単純化したものだと言えるだろう。当時の日本では、阪急や西武といった私鉄各社が都市開発をリードしていた。コロナにより働き方や購買行動が変化することで、都市開発、不動産開発がどのように変化するのか。今後のビジネスの変化についても考えてみたい。 - ゴーン騒動に200億円も支出した日産の判断は正しいのか?(後編)
ゴーン氏が逮捕され、西川廣人氏が不正な報酬授受で退任した後も、極めて疑問の残る支出が発生している。「ゴーン騒動」に日産が払ったコストだ。報道によれば、一連のトラブルに対応する費用は2億ドルにも上るという。 - 報酬5億円でゴーンの暴走を放置した西川前社長の責任(中編)
メディアでは一斉にゴーン批判の嵐が巻き起こったが、仮に暴走していたのであればそれをとめる役目を負うのは役員であり、その最高責任者は日産の代表取締役社長兼CEOの西川氏にほかならない。ゴーン氏が犯罪を行って逮捕・起訴されたのであれば、西川氏もセットで逮捕されるべきで、西川氏が逮捕されないのであればゴーン氏の逮捕もあり得ないはずだ。 - ゴーン国外逃亡で考える、日産前社長の西川氏が逮捕されない理由と検察の劣化(前編)
ゴーン氏の会見後も毎日のように新しい動きが報じられたが、そもそもの発端を理解している人は少ないだろう。世間では「給料をごまかして逮捕された挙句に国外逃亡したとんでもないヤツ」と認識されていると思うが、実際はそのような単純な話ではない。なぜゴーン氏が国外逃亡を選んだのか、なぜ西川氏と検察もまた問題があると断言できるのか、複雑に絡んだ事件を整理してみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.