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バイトダンスとオラクルの説明にズレ〜 TikTokは米中どちらの企業なのか:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/4 ページ)
中国バイトダンスのショート動画アプリ「TikTok」と、米オラクル、米ウォルマートとの技術提携案が今月19日、トランプ大統領の「原則承認」を受けた。しかし、バイトダンス、米企業2社の発表文のニュアンスにずれが生じており、TikTok新会社の立ち位置を巡り、憶測や波乱の芽を生んでいる。
取締役5人のうち4人が米国人
こうしたそれぞれの思惑が絡み合い、3社のスキームが固まった。オラクルおよびウォルマートは19日(米国時間)、TikTokとの技術提携案について、米政府から基本的に承認を受けたと発表した(リンク:オラクル発表、ウォルマート発表)。発表文には以下のことが書かれている。
- 新会社「TikTok Global」を設立、本社を米国に置く。新会社にはオラクルが12.5%、ウォルマートが7.5%出資する
- 取締役会は5人で構成、ウォルマートのダグ・マクミロンCEOなど4人が米国人
- ウォルマートはTikTokにEC、配送業務、決済、オムニチャネルサービスを提供する
- 2021年中に米国での新規株式公開(IPO)を目指し、米国人の株式保有比率を高める
- 技術提携によって、長期的に2万5000人の雇用を創出し、50億ドル(約5200億円)以上の税金を米財務省に納める
- オラクルはTikTokのクラウドプロバイダーとして、ユーザーデータを管理し、外国政府に個人情報が渡ることを防ぐ
- 他の企業と協力し、人工知能(AI)を活用したオンライン動画教育カリキュラムを子どもたちに開発・提供する。カリキュラムは科学、歴史、数学などをカバーする
またバイトダンスには米国の投資家が4割程度出資しており、オラクル・ウォルマートを合計すれば、米側が株式の過半を握ると、米メディアは報じた。
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