「唐揚げバブル」の行末に不安を感じる、2つの理由:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
コロナ禍で外食産業がダメージを受けているなかでも、「唐揚げ専門店」は好調だ。次々に新しい店が誕生しているが、筆者の窪田氏は「唐揚げバブル」を懸念している。どういうことかというと……。
「唐揚げバブル」の行末に不安
ただ、このような形で気軽に参入できるのは、ワタミだけに限った話ではない。日本全国で、「なんか簡単だって話だから、いっちょ唐揚げ屋でもやってみっか」という人が背中を押されて、続々と「唐揚げ専門店」に参入しているのだ。
その中には当然、ワタミや他の有名専門店のように味を再現できない人もいるだろう。「まあ、まずくはないけど、これなら家でつくるのと変わらないかな」というビミョーなクオリティーの店がちまたに溢れ返ると、「唐揚げ専門店」という業態の価値が低下して、閑古鳥が鳴く店も現れるはずだ。
このように「誰もが気軽に競争に参入できる」というハードルの低さゆえ、われわれが予想をするよりもはるかに早いペースで、唐揚げ専門店の市場が飽和して、し烈なカニバリが始まってしまう恐れもある。つまり、次から次へと新しい「唐揚げ専門店」が開業して、厳しい競争から次々と潰れていく、というラーメン店の世界と同じようなことになってしまうのだ。
ご存じのように、ラーメンも「初期費用が少なくて新規参入しやすい」と言われ、コロナ禍の前は、脱サラなどをして、ラーメン屋を開業する人が後を絶たなかった。国民食ということもあり、常に新しいラーメンが開発され、ときに「ブーム」も起きるほど市場はにぎわっていたのである。
しかし、その一方で、飲食店の出店開業支援サイト「飲食店.COM」の「閉店した飲食店の業態と営業年数の調査結果」によれば、開店したラーメン店の約4割が1年以内に閉店し、3年以内には3割も閉店している。ハードルの低さから多くの人が参入しているが、ビミョーなクオリティーの店も多くなるため、消費者からすぐに飽きられてしまっているのだ。
国民食の「唐揚げ」も出店ラッシュが一段落したら、このような廃業率の高い市場になるのではないか。そして、実は参入障壁の低さ以外にも廃業率を高める恐れのある要素がもう一つある。それは今の時代、「鶏肉」という食材はかなりリスクが高いことだ。
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