「唐揚げバブル」の行末に不安を感じる、2つの理由:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
コロナ禍で外食産業がダメージを受けているなかでも、「唐揚げ専門店」は好調だ。次々に新しい店が誕生しているが、筆者の窪田氏は「唐揚げバブル」を懸念している。どういうことかというと……。
「不信感」が爆発する恐れ
8月、中国の深圳市が、ブラジルから輸入された冷凍の鶏手羽肉から新型コロナウイルスが検出されたと発表した。今のところ鳥が新型コロナに感染することは確認されていないので、この話はうやむやになって終わったが、鳥インフルエンザもあるなかで、このようなリスクは「唐揚げ専門店」は常に想定しなくてはいけない。
またウイルス以外にも、衛生面や安全面での不安もある。数年前、日本の外食でかなり使用されているブラジル産の鶏肉のなかで、発がん性の高い抗生物質などで古い肉を新しく偽装をしていたことが話題になったが、このような不正が発覚をすれば当然、「唐揚げ専門店」も大きな打撃を受ける。
次々と新規参入する「唐揚げ専門店」の中には、「国産」をしっかりと明記する店もあれば、そのあたりはうやむやにしている店もあるからだ。そのような不透明さから、これらのリスクが発生したとき、消費者の「不信感」が一気に爆発する恐れもあるのだ。
実際、2014年にマクドナルドがナゲットを調達していた中国の食肉加工会社が、使用期限切れの食肉を使っていたことが発覚したときには、その工場の肉を使用していなくとも中国産鶏肉を使用している外食が対応を余儀なくされ、「国産鶏」しか使っていないケンタッキーまで風評被害を受けた。
このようなリスクも踏まえると、ハードルが低いからとイケイケドンドンで急速に店舗網が拡大していく今の「唐揚げバブル」には危ういものを感じてしまう。「あれ? あの唐揚げ専門店、まだできて1年も経ってないのに、もう潰れちゃったのか」なんて会話が当たり前にならないことを祈りたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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