パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島に移転する計画を発表し、話題になっている。地域活性化やBCPに向けた取り組みだというが、この計画はとてもリスキーなのではないか。その3つの理由とは……。
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島へ移転する、というニュースが大きな話題になっている。
現在、東京・大手町の本社などで人事や経営企画などを担う約1800人のうち、3分の2にあたる約1200人を2024年5月までに段階的に淡路島へと異動させていくというのだ。
日本経済新聞が「本社の地方移転 BCPに配慮、重要性増す」(9月1日付)と報じているように、新型コロナでリモートワークや在宅勤務が浸透したことを受けて、首都圏の企業の中でも「密」を避けて、本社を地方へ移転しようという動きが広がっている。今回の移転もBCP(事業継続計画)のためにリスクを分散させる意味合いがあるそうで、パソナとしては「どこでも仕事ができることを実証したい」と述べている。
では、なぜリスクヘッジ先が淡路島になったのかというと、同社では南部靖之代表が兵庫県出身ということもあって、08年に淡路島に進出。漫画をテーマにした体験型テーマパーク「ニジゲンノモリ」や、インバウンド向けにハローキティをテーマにしたレストラン「HELLO KITTY SMILE」などを運営しているからだ。
ただ、これらの地方創生関連事業は現在、新型コロナでかなり厳しいことになっており、20年5月期には約17億円の減損損失を計上している。
つまり、淡路島に本社機能を移転させることによって、インバウンドが消えて苦境にあえぐテーマパーク事業などのテコ入れを図るとともに、1200人という「新住民」を投入することで淡路島全体を活性化させていく狙いがあるのだ。南部代表も毎日放送の取材に対してこんなことをおっしゃっている。
「世界中から、日本中から淡路島で働きたいというモデルケースをつくりたい。真に豊かな人生が味わえることがいかに大切か、そのモデルケースを都会の方に見せたい」(MBSニュース、9月1日)
この素晴らしいビジョンにケチをつけるつもりは毛頭ないのだが、筆者は今回の決断には若干の危うさを感じている。リスクヘッジのための本社機能移転が皮肉にも、パソナに新たな事業リスクを生み出してしまっているからだ。
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