パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島に移転する計画を発表し、話題になっている。地域活性化やBCPに向けた取り組みだというが、この計画はとてもリスキーなのではないか。その3つの理由とは……。
不満を抑えて「望まない異動」をすると……
それは大きく分けると以下のような3点である。
(1)「望まない異動をさせられた」と訴える社員が現れる
(2)1200人の新住民流入による地域住民とのトラブル
(3)南海トラフ地震による機能麻痺(まひ)
まず、(1)の「『望まない異動をさせられた』と訴える社員が現れる」から説明しよう。
当たり前の話だが、パソナで働く人たちのみんながみんな「自然豊かな淡路島に住みたいな」と願っていることなどあり得ない。もちろん、中には、SDGsだ、グローカリゼーションだという意識を持って、南部代表のように淡路島からこの世界を変えようという志を抱く方もいらっしゃるだろう。
しかし、大企業というものは「生活の安定」を求める人もたくさんいらっしゃるのも事実だ。
東京で働いていくことを前提にマイホームを購入している方もいれば、子どもの学校、親の介護などさまざまな事情で今のライフスタイルを変えられない事情がある人もたくさんいる。ユニクロやニトリで働こうと思った人は、いずれ本社のある山口や札幌で生活することも織り込み済みだが、パソナで働く人の多くは淡路島での人生設計をしていないのだ。
もちろん、パソナとしては「社員が淡路島に移ることを希望しない場合は、個別に意思を確認したうえで、どう対応するか決めたい」(NHK 兵庫NEWS WEB、9月1日)と述べているが、そこは「ノーと言えない日本人」である。
「社畜」「滅私奉公」なんて言葉が当たり前のように語られ、「半沢直樹」にカタルシスを感じる人がたくさんいることからも分かるように、日本の企業戦士は組織の決定に逆らうことはできない。どんなに腹の中で「淡路島なんか行きたくねーよ」と思っていても、今後のキャリアパス、人間関係などを踏まえると、不満をグッと押し殺して「喜んで!」と言ってしまうのが、日本のサラリーマンなのだ。
ただ、時代は変わった。これまでは不満があっても居酒屋やスナックでグチるのが関の山だったが、SNSやメディアに会社の悪口をぶちまける人が一定数現れている。それはつまり、「淡路島勤務を希望します!」と宣言をした約1200人からも同様の「内部告発」が起きる恐れがあるということだ。
人材派遣のリーディングカンパニーとして「働き方改革」にも率先して取り組んでいるパソナにとって、このような労務問題が企業イメージを大きく損ねるリスクであることは言うまでもあるまい。
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