パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島に移転する計画を発表し、話題になっている。地域活性化やBCPに向けた取り組みだというが、この計画はとてもリスキーなのではないか。その3つの理由とは……。
地域住民が最も求める「雇用」がない
そこに加えて、筆者が懸念しているのは(2)の「1200人の新住民流入による地域住民とのトラブル」だ。
……と聞くと、「人口が増えてにぎやかになるんだから淡路島の人からすれば大歓迎だろ」という声が聞こえてきそうだが、残念ながら今回の本社機能移転は、地域住民が最も求めている施策が抜けている。
それは、「地元の雇用」である。
地方の人が、地域に全国的に名の知れた大企業がやってくる、と聞いてまず期待することは何かというと、地元の人間をどれだけ雇ってくれるか、であることは言うまでもない。もちろん、東京から社員や取引先がたくさんやってきて飲食店が潤うという効果もあるが、経済的に疲弊する地方が何よりも欲しいのは「働き口」だ。
だから、製造業や食品メーカーが工場を地方に建設する際、必ず地元に大量の雇用を約束する。原子力発電所でも地元の人をたくさん雇うのは、「地元対策」の意味もあるのだ。
つまり、淡路島の人々の本音で言えば、東京で働く人を1200人も引き連れてくることよりも、淡路島で暮らす人たちを1200人雇ってくれた方がはるかにありがたいのである。
もちろん、パソナはこれまで島内の観光施設で地元の人を雇用するような取り組みもしている。だが、今回の本社機能移転は、地元の雇用は直接関係がない。そこに不満を感じている住民もいるはずなのだ。事実、NHKの地域ニュースには、こんな地元の声が紹介されている。
「パソナグループによる観光施設も増えていて、淡路島じゅうがパソナグループに押されているように感じます。もっと地元の産業を一緒にすくい上げてほしいし、淡路島の人も雇ってもらい、若い人が働ける場を作ってもらいたい」(NHK 兵庫NEWS WEB、9月1日)
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