パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島に移転する計画を発表し、話題になっている。地域活性化やBCPに向けた取り組みだというが、この計画はとてもリスキーなのではないか。その3つの理由とは……。
こういう不満をさらに膨らませる恐れがあるのが、日本中で問題になっている移住者と住民の対立、いわゆる「移住トラブル」だ。筆者も沖縄のある離島の移住トラブルを現地で取材したことがあるが、家の建て方、ライフスタイル、地域の開発についてなどさまざまな面で、感情のすれ違いから訴訟に発展するようなケースもあった。
現在、パソナと淡路島の住民との関係は良好だろうが、これから観光開発を加速していくとすれば、ハワイや沖縄、そして京都などでも必ず起きた「観光公害」の問題が顕在化する。それがこじれれば、「パソナ社員VS. 住民」という対立にも発展しかねない。1200人は住民にとっては「移住者」であると同時に、観光開発業者でもあるからだ。
つまり、企業の戦略として1200人の社員を淡路島に「定住」させることは、引越しをさせて「はい、終わり」ではなく、そこからスタートをする1200人分の「移住リスク」にも企業として向き合っていかなければいけないことなのだ。
ここまで述べた2つのリスクは、企業としてしっかりとした対策を取れば十分に回避できるものである。だが、対策をとっていたとしてもかなりのダメージを覚悟しなければいけないのが、(3)の「南海トラフ地震による機能麻痺」だ。
ご存じのように、南海トラフ地震は、19年に政府の地震調査委員会が今後30年以内に発生する確率を「70%から80%」に引き上げたことで大きな話題となった。では、淡路島はどのような被害になるのか。兵庫県の「兵庫県南海トラフ巨大地震・津波被害想定」には以下のようにある。
- 全域で震度6弱以上、最大震度7の強い揺れにより、建物被害が大きく、淡路3市の建物総数の約4割が全壊または半壊の被害を受ける
- 建物倒壊による人的被害も県下で最も多く、冬早朝5時発災の場合、死者が約1100人と、全県の建物倒壊による死者の約60%が淡路地域で発生する
- 想定される津波水位が県内で最も高く、津波による死者は、淡路3市で約1710人(冬早朝5時)〜約1920人(夏昼間12時)に上る
- 発災時にアクセス経路が寸断され孤立する可能性がある集落は約20箇所、約6000戸に及ぶ。そのほとんどが海岸沿いの漁業集落である
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