パソナの1200人淡路島移転は「リスキー」だと感じる、3つの理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
人材派遣大手のパソナグループが本社機能を淡路島に移転する計画を発表し、話題になっている。地域活性化やBCPに向けた取り組みだというが、この計画はとてもリスキーなのではないか。その3つの理由とは……。
1200人を1カ所に集中させるリスク
断っておくが、このような甚大な被害が想定されるから、本社機能を移転するのはリスキーだなどと言いたいわけではない。首都直下型で甚大な被害を受けるのは現在、パソナの本社がある東京も同じだ。つまり、どこに本社機能を置いたところで何かしらのリスクはあるのだ。
自然災害の多い日本においてシビアにBCPというものを考えた時、東京だろうが淡路島だろうが1カ所に社員をドカっと置いていることがリスキーだと申し上げたいのだ。
例えば、パソナが本社機能を移した後、南海トラフ地震が起きたとしよう。南部代表や幹部社員をはじめ、1200人もの人たちが「被災」をするので、東京に600人が残留しているとはいえ、本社機能の回復にはかなり時間がかかるだろう。
しかし、仮に淡路島で働く社員がもっと少なかったらどうか。パソナグループは北は北海道から南は沖縄までさまざまな拠点があるのだから、それらを活用して1200人を分散させていれば、もし最悪、「淡路島本社」が壊滅的な被害を受けても、パソナとしてそこまで機能麻痺はしないのではないか。
もちろん、リモートワークがそこまで定着していない今、理想論であることは重々承知だ。しかし、一方でパソナグループは人材派遣などで日本の「新しい働き方」を生み出している企業であり、「社会の問題点を解決する」というスローガンとともに、こんなミッションを掲げている。
「誰もが自由に好きな仕事を選択し、一人ひとりの人生設計にあわせた働き方ができる社会を築く」(パソナグループWebサイト「パソナグループの企業理念」より)
ならば、淡路島に本社機能を集中させて、社員を引き連れていくのではなく、1200人の人生設計に合わせて、好きな拠点で働かせてみてもいいのではないか。つまり、「本社機能移転」ではなく、リモートワークを活用して思い切って「本社オフィス廃止」に踏み切るのだ。テーマパークなど地方創生の事業を進めていくうえで、どうしても人手が足りないのなら、東京から引っ張ってくるのではなく、地元の人々を採用をする。そちらのほうが本当の意味で地方創生になるはずだ。
それこそが、「社畜」や「転勤族」のように会社に縛られた人生を送らなくてはいけない人が圧倒的に多いこの国の問題点を解決することにもつながるのではないか。
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