「先送り」したいきなり!ステーキと「先手」を打った鳥貴族 コロナ禍で明暗分かれた「見通し」の差とは?:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
コロナ禍の傷がまだ癒えない外食産業だが、「勝ち組」と目されていた企業間でも明暗が分かれた。今回は、いきなり!ステーキと鳥貴族を例に、小売・流通アナリストの中井彰人氏が解説していく。
東京都は、新型コロナウイルス感染状況の警戒レベルを、最も深刻な状況からワンランク下げ、飲食店などに要請している午後10時までの営業短縮を予定通り9月15日で終了した。コロナ禍の第2波がなんとか落ち着くような動向となり、経済活動への制約が少し緩和する見通しとなってきている。Go To トラベルも、10月から東京都が対象エリアとなることが決まったし、飲食店支援を対象としたGo To Eatも全国的に実施される時期が近づいてきている。
このように、外食への実質的な「規制」は緩和されつつある一方で、業界の売り上げはコロナ前と比べて大幅な落ち込みが続く厳しい状況が続いている。次の図表は、2019年7月以降の外食業態別売り上げ増減率を表したものだ。
業態によって差はあるが、業界全体でも前年の85%前後、アルコール比率の高い業態では40%程度と大幅な落ち込みが続いている状態である。サラリーマン的には、大人数での宴会は所属組織から事実上禁止されているような状況であったため、行きたくても何か起こったときのことを考えると、自粛せざるを得ない状況にあったようだ。第2波の収まりで「自粛機運」が若干緩むようになり、また、支援キャンペーンなどの投入などによって、少しでも外食業界の媚しい環境が緩和されることを願わざるを得ない。
飲食店が連なるような繁華街では、閉店した飲食店空き店舗の「入居者募集中」という張り紙が目につくようになってきた。中でも、首都圏の繁華街に数多く店を構えていたペッパーフードサービスの「いきなり!ステーキ」が閉店したテナントをよく見かける。数年前に、テレビを中心としたマスコミに露出し、繁華街や商業施設内に出店して急拡大した成長企業として注目されたチェーンだが、近時では業績が暗転して不採算店の整理に追われている状況になってしまった。
コロナ禍の影響が大きなダメージとなったことは間違いないが、その前から業績の急落が始まっていたことは、マスコミ報道などで周知のことかもしれない。会社自身も認める業績不振の要因は、出店を急ぎすぎたため近い場所に複数の店舗を出してしまい、自社競合により店舗あたりの売り上げが減少して採算が取れなくなってしまう店が続出したことだとされる。
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