日本郵政の「謝罪キャンペーン」が、新たな不祥事の呼び水になると考える理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
郵便局員による「おわび活動」がスタートした。「かんぽ生命」契約者の自宅などを局員が訪ねて、謝罪や説明を行うという。こうした行動に対し、「いいことだ!」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。どういうことかというと……。
新たな不正が報告される理由
現在、日本郵政グループが掲げている「すべてを、お客さまのために」というスローガンを叫べば、叫ぶほど、現場から新たな不正が報告されてしまうかもしれない。つまり、莫大な予算と、人的リソースを割いたこの謝罪キャンペーンが昨年から止まらない「不祥事」の新たなトリガーというか、呼び水になってしまう可能性がかなり高いのだ。
なぜそんな皮肉な現象が起きるのかというと、主に以下の3つの理由がある。
(1)ただでさえ疲弊する現場に「謝罪業務」で新たな負担がかかる
(2)改善点の「薄い中身」に不満を感じる人々の「内部告発」が活性化する
(3)露骨な「お役所体質」にシラけた社員のモラルハザードが進行する
まず、(1)については詳しい説明の必要はないだろう。ご存じのように、日本郵政グループでは業績悪化から郵便局員を1万人削減することが検討されている。一方、2万4000という郵便局ネットワークは維持することを増田寛也社長は明言している。
「人を減らして事業所数はそのまま、でもITや業務効率化で乗り切ります!」というのは、典型的なブラック企業のマネジメントスタイルだ。当然、現場で働く人たちには嫌な予感しかない。
そんな中で始まったのが今回の謝罪キャンペーンである。リストラはされるわ、頭を下げて回らされるわ、では現場の人々への負荷がかなりかかるのは間違いない。ポキンと心が折れてしまう人たちもたくさんいるはずだ。
ご存じのように、かんぽ不正や年賀状の自腹営業など、郵便局員の不正行為は、ほとんどがノルマに追い立てられ、現場が疲弊する中で発生するのがパターンだ。ならば「人員削減+謝罪行脚」で痛めつけられたら、また似たような不正が続発するのは容易に想像できよう。
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