日本郵政の「謝罪キャンペーン」が、新たな不祥事の呼び水になると考える理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
郵便局員による「おわび活動」がスタートした。「かんぽ生命」契約者の自宅などを局員が訪ねて、謝罪や説明を行うという。こうした行動に対し、「いいことだ!」と思われたかもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。どういうことかというと……。
内部告発が活性化
そこに加えて、筆者が「不祥事」の背中を押すことになると考えるのが(2)の「改善点の『薄い中身』に不満を感じる人々の『内部告発』が活性化する」ということだ。
昨年の「かんぽ不正」が発覚したのは、「西日本新聞」への「内部告発」がきっかけだ。その後も、同様の不正が次々と明らかになったのも「リーク」が多くを占める。つまり、日本郵政グループは今、非常にメディアへの内部告発が活性化している状況なのだ。
では、なぜこうなっているかというと、組織の体制・方針、あるいは現場の労働環境などに対して不満が高まっているからだ。
筆者も20年以上、いろいろな企業、組織の方から内部告発を受けたが、ほぼすべての人たちに共通しているのは、「自分が不正を告発することで、組織を生まれ変わらせたい」という思いだ。「なんかカネになるかなと思って社内資料持ってきました」とか「ウチの社長ムカつくんで、書いちゃってください」なんてケースはまれだ。
つまり、不正が次から次へとマスコミに報じられる企業というのは、不満を抱えている多くの人間が次から次へと内部情報をマスコミに垂れ込むような組織なのだ。
そのような意味で、郵便局は典型的な悪循環の中にどっぷりと浸かっている。過疎化と競合サービスの拡大によって、郵便局の利用者はガクンと減ってきているが、国から何をしても2万4000というネットワークは死守すべしと言われているので、現場はすり減っていく。そこへ加えて、保険を売れ、年賀状を売れ、目標必達だとプレッシャーをかけられる。そうなると当然、一線を超えて、高齢者をカモにしてしまう輩も現れる。マジメにがんばっている郵便局員からすれば、とても正視できないモラルハザードだ。
そのなんともやりきれない不満が、「西日本新聞」などへの「内部告発」につながったことは明らかである。では、それを踏まえて、そのような組織に不満を抱えている人たちが今回の謝罪キャンペーンをやらされて、どんな気持ちになるだろうか。頭を下げてまわった先に、郵便局の構造的な問題を解決する希望を感じることができるだろうか。
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