2015年7月27日以前の記事
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コロナ禍で公的融資と銀行の隙間をつなぐ トランザクションレンディングの社会的意義(2/2 ページ)

過去の取引データなどをもとに中小企業などに融資を行う仕組みであるトランザクションレンディングは、フィンテックの中でもコロナ禍で注目されているものの1つだ。米国では早くからサービスが拡大してきたが、コロナ禍において、その融資スピードの速さから注目された。国内でも、コロナ禍を機にニーズが高まっている。

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スピードだけでないトランザクションレンディングの立ち位置

 これまでトランザクションレンディングといえば、大手ECサイトが出店者に対して売り上げデータをもとに融資を行うサービスが有名だった。Amazonが行うAmazonレンディング、楽天市場が行う楽天スーパービジネスローンエクスプレス、Yahoo!ショッピングやヤフオク!の出店者にジャパンネット銀行が行うJNBビジネスローンなどがそれだ。

 しかし、daytaのようにEC売り上げデータ以外の情報をもとに行うトランザクションレンディングも増えてきている。住信SBIネット銀行は、2016年にクレジットカード決済代行サービスのゼウスと組んで、カードの売り上げ数値を使ったトランザクションレンディングをスタート(現在は終了)。その後、マネーフォワードと組み会計情報を使ったトランザクションレンディングも提供(現在は新規を停止)した。2018年夏からは、法人口座の入出金情報を使った現在の形でサービスを提供している。

 既存の銀行融資の場合、審査には3期連続黒字の決算書が必要など、ある程度の期間を求められる。一方で、創業期の企業は、公庫や保証協会付きで多くの場合融資を受けられるものの、「2回目の借り入れでつまずくケースがある。ここにトランザクションレンディングがハマるのではないか」(柴田氏)と考えた。


創業期の資金ニーズと、事業が安定してからの資金ニーズに対する資金調達方法はあったが、その間の成長期が欠けていた。このピースを埋めるのがトランザクションレンディングだ(住信SBIネット銀行資料より)

 この、創業期から成長期までの隙間の融資ニーズを埋めるのがトランザクションレンディングの社会的意義だと柴田氏は言う。

 またコロナ禍においては、公的融資までのつなぎ資金や、売り上げが急回復したことに伴う運転資金ニーズ、店舗閉鎖のための資金ニーズにも、審査や来店が不要でスピーディに融資が実行できるトランザクションレンディングが貢献できるとみる。

 現時点での課題は、融資判断のために必要なデータの蓄積だ。「デフォルト(貸し倒れ)確率を統計的に予想しようとすると、デフォルトのデータが必要になる。トランザクションレンディングサービスに16年10月に参入、現在のdaytaを始めたのが18年の夏なので、まだデフォルトの数が少ない。AI的にいうと学習データが足りていない」と柴田氏。

 現在の商品設計は1年返済の短期で、毎月返済となっているため、返済のためのキャッシュフロー負担が大きい。2年や3年、また期限一括の返済にしてほしいというニーズはあるが、デフォルトのデータが少ないとまだ難しいのだという。

 コロナ禍で、来店不要、スピード融資というトランザクションレンディングのメリットに光が当たった。米国に比べて発展が遅れている手法でもあり、データの蓄積によってサービスの幅が広がることが期待される。

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