あなたの会社に効く! 「セールステック」の探し方:どこから手をつければいいのか(4/4 ページ)
「セールステック」と呼ばれる営業支援ツールの普及が進んでいます。ただ、種類がたくさんあるので、どこから手を付ければいいのか、迷ってしまうケースも多いのでは。自社に必要なツールを考察したところ……。
(4)セールステックを使ってみる
ここまで思考してようやくツールの選定です。
セールステックはその名の通り、ソフトウェアの力で営業活動を支援するツールであるため、さまざまなタイプがあります。ここでは前項で挙げた4つの勝ち筋に効果のありそうなツールを中心にご紹介します。
(1)SFA(セールス・フォース・オートメーション):営業プロセスのほぼ全て(予算管理から潜在顧客管理、商談管理、受注管理、売上予測まで)をデータ一元ログ化、部署間共有、各種アラート設定などの価値でサポートする。高機能ゆえに営業スタッフの理解を十分に得られない場合、従来のエクセル管理との2重オペレーションに陥る懸念もありますが、SFAソフトウェアの設計思想には様々な業界/企業で紡がれてきた「一般的な営業ベストプラクティス」のエッセンスが実装されているため、勝ち筋(2)(3)(4)に該当するビジネスであればSFAの導入を戦略的に検討することは意義が大きいはずです。
(2)オンライン商談ツール:インターネットを利用したビデオ会議システムおよびその周辺機能を提供。こちらもSFAと同様に、勝ち筋(2)(3)(4)と広い範囲の営業行為を効率的にしてくれます。プレゼンに特化した機能群や、各種の社内システムとのデータ連携など、ツールごとに付加価値を競い合っているだけでなく、ユーザー体験(事前準備の要否やサインイン方法など)やセキュリティー対策などの基本事項も各社各様であるため、自社の状況に合わせて選ぶと良いでしょう。
(3)MA(マーケティングオートメーション):潜在顧客を集めて商談に進ませるマーケティングプロセスを、データドリブンな手法でシナリオ化、最適化、高速化するツールです。あくまで属人的に対応していたマーケティング活動をシステム化するものなので、そもそもマーケティングプロセスの重要性が大きくない勝ち筋(2)(3)(4)への効果は大きいとは言えず、勝ち筋(1)において効果を発揮するものになります。
(4)リードジェネレーター:有象無象の法人・個人の中から自社のお客様となりうる有望先を選別するためのツールの総称で、リードスコアリング(潜在顧客の評価)、リードターゲティング(潜在顧客の絞り込み)、チャットボットを含む問い合わせ対応最適化などを含みます。外形的な情報、標準化された情報を活用するサービス群であるため、不特定多数顧客への多売が前提のビジネスモデルに効果的であり、勝ち筋(1)(2)において検討の価値があります。
(5)商談分析(6)セールスイネーブルメントツール(営業活動の型化、底上げを実現するサービス群):前提として誰でも短期間に営業活動の要諦が学べる商材/ビジネスモデルでないと十分な効果は発揮できません。勝ち筋(2)を中心に検討するとよいでしょう。
(7)PMツール(プロジェクトマネジメントツール):勝ち筋(4)のオーケストラタイプにとって、営業活動の成否は社内外の関係者マネジメントが握っており、PMツールはこの意味で重要なセールステックと言えると思います。受注・売上計上に必要な多要素の一元管理、それらの要素の相互依存関係の見える化、それに基づく関係各所へのコミュニケーションなどを最適化することが可能です。ツールごとに提供機能やユーザー体験は大きな差異がありますので、自社の状況に照らした適性を一つ一つ見ていきましょう。
COVID-19の感染拡大以来、多くの会社でセールステックの早期導入が叫ばれています。その一方で、営業のあり方は組織によって大きく異なっているため、誰にもまんべんなく有効なツールというものはないはずです。まずは自社の営業の勝ち筋を見極めることが第一であり、その上で自社に本当に必要なツールを見定める選球眼こそが、この新しい社会に求められる営業能力なのかもしれません。
著者より:
一部ツールに関する製品や関連記事についてはこちらをご参照ください。
SFA:https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/spv/1010/29/news08.html
商談ツール:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2010/01/news102.html
MA:https://www.itmedia.co.jp/keywords/marketing_automation.html
PMツール:https://www.keyman.or.jp/commtool/pmgt/product
著者プロフィール:中山悠介
三井物産株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2017年にGMOペイメントゲートウェイ株式会社に入社。現在は、企業価値創造戦略統括本部、経営企画・新領域創造部 部長
Fintech領域における革新的ビジネスの企画・創出がミッションの一つ。次世代ビジネスの種まきのため、社内での新規事業インキュベーションだけでなく、M&A、スタートアップ投資、大手企業とのアライアンス構築など幅広く活動している。趣味は博物館、水族館、科学館などの「館」めぐり。
埼玉県立浦和高等学校、京都大学経済学部卒業
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