「存在意義がなくなる」と不安、社内のデジタル化を阻むヒトたち 不安を解くには?:連載・デジタル時代の人材マネジメント(4/4 ページ)
伝統的な日本企業がデジタル化を進めるには、2つの大きな課題に向き合わなければならない。どんな課題かというと……?
そうした多くの不安を感じるヒトに対しては、デジタル化によるビジネスモデルの刷新や、業務プロセスの改革といった内部環境変化に関して経営層自らが語り掛けると同時に地道な教育活動と啓蒙活動によって無理解、未理解からくる誤解を解いていかなければならない。
本当の意味で会社全体としてデジタル化による成果をあげるためには、そうしたヒトの協力やデジタルビジネスへの積極的な関与が必要になってくるからである。
そのための配置・ローテーションを含む学び直しの仕掛け、教育体系の再構築、外部人材の積極的な採用、外部パートナー企業や大学等との産学連携、そしてデジタルで事業、経営をリードできるリーダー人材育成のためのキャリアパス整備に一刻も早く着手する必要がある。
多くの日本企業が組織、ヒトの問題を起因とした抱える障害を乗り越えられない限りは、デジタルを活用して新しいビジネスを生み出し、かつ俊敏に業務プロセスを変革することは困難である。
デジタルトランスフォーメーションとは、そのプロセスにおいて生じるさまざまなヒトや組織の抵抗や軋轢(あつれき)と向き合い、克服することで組織全体を活性化する企業行動そのものなのである。
著者紹介:内藤琢磨
(株)野村総合研究所 コーポレートイノベーションコンサルティング部 組織人事・チェンジマネジメントグループ グループマネージャー 上席コンサルタント。
2002年野村総合研究所入社。国内大手グローバル企業の組織・人事領域に関する数多くのコンサルティング活動に従事。専門領域は人事・人材戦略、人事制度設計、グループ再編人事、タレントマネジメント、コーポレートガバナンス。
主な著書・論文に『NRI流 変革実現力』(共著、中央経済社、2014年)、『「強くて小さい」グローバル本社のつくり方』(共著、野村総合研究所、2014年)、『デジタル時代の人材マネジメント』(東洋経済新報社、2020年)などがある。
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