販売台数は前年比3倍! シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」開発者に聞く――共働き家庭の必需品に:「時産家電」市場を狙う(3/3 ページ)
シャープが2015年に発売した水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」がヒットを続けている。派手な宣伝戦略を取っていないにもかかわらず、2020年の4〜6月の販売台数は前年比3倍まで急増した。開発者に舞台裏を聞いた。
メニューの幅を広げる
ホットクックは、これまで広告をあまり打ってこなかったが、その便利さが口コミやSNSなどを通じて広がり、働く女性層に浸透してきている。
経済評論家の勝間和代さんは3台のホットクックを使うヘビーユーザーだ。料理イベントなどに出演して、ホットクックを使う料理は、普段の料理よりも少ない糖分や塩分で調理できるためおいしく健康的でダイエット効果が期待できることや、デパ地下やスーパーで何度も総菜を買って帰ることを考えれば、ホットクックの価格は数カ月で十分ペイする、と評価している。
利用者数が増えたことで、公式ファンコミュニティー「ホットクック部」も立ち上げた。現在、購入者のうち約3000人が加入し、ユーザーからはオリジナルレシピの投稿などが多く寄せられているという。現在、ユーザー投稿レシピからセレクトしたメニューをダウンロードしてホットクックで自動調理が可能だが、今後はユーザー投稿レシピのダウンロード数を増やしたいとしている。
新しいメニューを探したいとき、PCやスマートフォンからクラウドに接続すれば、ブラウザのレシピサービス「COCORO KITCHEN」や「ホットクック部」が提供する新しいレシピを見つけることができる。
管理栄養士の資格も持っている栗原技師は「私がホットクックで最も多く作るメニューが無水カレー。肉じゃがや筑前煮といった和食メニューでも簡単にできる。今後はメニューを増やし、ホットクックの使い勝手をさらに改善したい。利用者をさらに拡大し、台所の生活必需品に進化させたい」とさらなる開発意欲を見せている。
料理は家内任せで、おいしそうな総菜が店に並んでいれば買ってしまいがちな筆者にとって、そんなに便利な調理家電ならば使ってみようかとも思う。栗原技師が言うように、忙しいときは自動調理で済ませ、休日など時間があるときは品数を増やしたり、新しいホットクックメニューに挑戦したりすれば、料理にメリハリをつけることもできる。
「男子厨房に入らず」という孟子から来た故事があるが、今の時代はこれほど簡単に調理ができるのであれば「男子厨房に入るべし」となりそうだ。
関連記事
- 快進撃続けるアイリスオーヤマの「おじさん技術者」たち 元「東芝」技術者のもと“テレビ”でも旋風を起こせるか
アイリスオーヤマ初の音声操作可能なテレビを開発するために陣頭指揮を執ったのは、東芝を早期退職してアイリスに入社したテレビ事業部長の武藤和浩さんだ。同社の家電事業部の社員は出身企業が異なる「混成部隊」だ。シャープや東芝出身の40〜50代以上もおり、中には30代で前の会社に見切りをつけてアイリスに移ってきた技術者もいるという。果たしてアイリスの「混成部隊」はテレビ事業でも旋風を起こすことができるのだろうか。 - 「アイリスのマスクを世界一にする」 ヒット商品ナノエアーマスクを開発した中途入社のリケジョ部長
ヒット商品「ナノエアーマスク」を開発したアイリスオーヤマの岸美加子ヘルスケア事業部長は「アイリスのマスクを世界一にする」(生産数)と意気込む。着け心地の良いマスクの開発に知恵を絞っている。「ナノエアーマスク」開発の舞台裏を聞いた。 - freee佐々木大輔CEOが語る「中小企業にテレワークが浸透しない」納得理由
自社のリモートワーク率99%を達成し、社外に向けてはリモートワークの課題を取り除くムーブメントを立ち上げるなど、効率的な働き方を追求するfreeeの佐々木大輔CEO(最高経営責任者)に、日本企業に根付いた課題と解決への糸口、アフターコロナの働き方を聞いた。 - 富士通「年収3500万円」の衝撃 ソニー、NECも戦々恐々の「グローバル採用競争」
「富士通3500万円」「NTTコム3000万円」「ソニー1100万円以上」「NEC新卒年収1000万円」――。優秀な人材を獲得するためにカネに糸目をつけず施策を展開する各社の危機感と焦燥。繰り広げられる採用“狂騒曲”の本質に迫った。 - 「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
鳥山明氏の『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』の担当編集者だったマシリトこと鳥嶋和彦氏はかつて、同作のビデオゲームを開発していたバンダイに対して、数億円の予算を投じたゲーム開発をいったん中止させた。それはいったいなぜなのか。そしてそのとき、ゲーム会社と原作元の間にはどのような考え方の違いがあったのか。“ボツ”にした経緯と真相をお届けする。 - 累計出荷数7億個! バンダイが、40年の集大成”究極のガンプラ”「UNLEASHED」発表 12月に世界で順次発売
BANDAI SPIRITSは、「ガンプラ」40周年の集大成として『PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60 RX-78-2ガンダム』を発表した。価格は2万5000円(税別)。12月に日本を含む全世界で順次発売する。 - 前年同期比42.3%減! プレステ4がサッパリ売れないソニーの業績が“絶好調”な理由
任天堂のライバルであるソニー。2020年度第1四半期(4〜6月期)決算では、売上高でも営業利益でも“絶好調”の業績をたたき出している。その要因は何なのか? 答えはソフトウェアのダウンロード販売率にあった。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.