BCP、本当に十分? 調査で読み解く、コロナ禍で浮かんだ課題と今後:「総務」から会社を変える(1/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍で注目度が高まるBCPだが、調査で見えた現状と課題とは?
コロナ禍により見えてきたBCPのほころび
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が在宅勤務を余儀なくされた。今まで在宅勤務を経験していなかった人も多かった一方で、一度経験してみると案外仕事もでき、生産性も高まった人もいたことだろう。今まで、東京五輪を目指し、なかなか進まなかったテレワークが、ここにきて、一挙に進み始めたというわけだ。
全社でフルリモート勤務、という企業はそうそうないだろうが、週に1〜2日は在宅勤務とする、そんな傾向がこれから定着しそうである。ピンチがチャンスとなって表れた好例だが、その一方でほころびが見えてきた側面もある。BCP(=Business Continuity Plan、事業継続計画)だ。
今回の記事では、筆者が編集長を務める「月刊総務」で、全国の総務担当者に対して7月に実施したインターネット調査結果を基に、新型コロナで新たに見えてきたBCPの課題について解説していこう。
BCP策定の現状
まず、BCP策定の実情について見ていきたい。BCPの策定状況を尋ねたところ、「策定済み」は38.9%と約4割にとどまり、「策定中」が25.9%、「まだ策定していないが策定予定である」が24.1%と続いた。
また、策定済みの企業に対してどんなリスクを想定してBCP対策をしているか尋ねたところ、「自然災害(地震、水害等)」が97.8%と断トツ。新型コロナのようなパンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等)は58.3%と2位であった。
わが国においては、地震国であり、近年の台風や夏の豪雨などの自然災害の激甚化が念頭にあり、この点は意識が高いようだ。過去に今回のようなパンデミックを経験していないわが国では、今回のコロナ禍のようなことはあまり想定しておらず、自然災害を念頭に置いたBCPの半分よりも大幅に少ない結果となった。経験していないので、対処方法も想定できず、結果、BCPとして取り組めていなかったのだ。
一方で、そもそもBCPを策定できていない企業は、どのような理由からできていないのだろうか?
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