総務のテレワークを巡る「衝撃の数字」 フルリモート実現の急所とは?:「総務」から会社を変える(1/4 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。総務のテレワークに関する調査で明らかになった衝撃の数字を基に、総務のフルリモートを実現するための急所はどこにあるのかを解説する。
衝撃的だった総務の「フルリモート」率
筆者が編集長を務める『月刊総務』では6月、総務におけるテレワークの実態を調査した。320人の総務担当者から回答を頂いた。
中でも驚くべき結果といっていいだろう項目は緊急事態宣言中の総務のテレワーク実施状況だ。なんと、「完全にリモートワークだった」と回答したのは、たったの1.6%だった。ほとんどの会社の総務が、何らかの形で出社していたということだ。その内容は、以下の通り。フルリモートとは程遠い実態が浮き彫りになった。
なぜ、感染する危険を冒してまで出社しなければならないのか。その理由として挙がったものは「郵便物の対応」が79.7%で最多だった。多くの業務はリモートでできたとしても、物理的な郵送物が届いてしまうので、その中身を確認して対応しなければならないということだ。特に月末月初には、膨大な数の請求書が届く。内容の確認とともに、経理に支払処理を依頼しなければならないのもネックだ。
次いで「契約書等の押印」が60.3%。これも物理的に存在する紙の契約書への対応だ。内容の確認とともに、合意のための角印、代表者印を押して、場合により印紙を貼って、消印、割り印の処理をして、一部を先方に返送するといった業務が、現場の足かせになっている。月刊総務では契約行為の実態や電子化についても調査しているが、それによると、電子契約のシステムを導入しているのは、11.6%にとどまっている。よって、多くの企業が物理的な対応をせざるを得ず、結果、総務で完全テレワークが進まない実態となっているのだ。
3位は「代表電話の対応」で49.8%だった。
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