BCP、本当に十分? 調査で読み解く、コロナ禍で浮かんだ課題と今後:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍で注目度が高まるBCPだが、調査で見えた現状と課題とは?
BCP対策ができていない企業にその理由を尋ねたところ、「策定するノウハウやスキルがない」が62.7%で最多となった。「策定する時間が取れない」が59.7%、「策定する人材がいない」が46.3%と続いている。BCPの策定は、従来の防災対策だけではなく、全社を巻き込み、経営判断も仰ぎながら作成する“全社活動”となる。当然、知識も必要だし、何より社内調整という膨大で煩雑な作業がある。
この点がネックとなり、策定に踏み切れない企業が多いのだろう。また、BCPは一度策定したら完成というものではなく、環境変化、自社の変化を織り交ぜながら、毎年見直していく必要もあり、終わりのない仕事という点も、なかなか手が付けられていない企業が多いゆえんだろう。
コロナ禍によりBCPはどうなるのか?
続いて、コロナ禍を経験してBCPに対する意識はどう変わっていったのかを見てみる。BCP策定済み企業において、新型コロナの感染拡大を通じて、自社のBCP対策をどう評価するか尋ねたところ、「見直す必要性を感じた」が91.7%と、ほとんどの企業が自社のBCP対策について改善点を見いだしていることが表れている。先に触れたように、今までこのように大きな被害を招いたパンデミックを経験していないので、あくまで「想定」の中で策定したBCPにほころびがあり、改善の必要性を痛感した結果となった。
一方で、BCPを策定していなかった企業においては、感染拡大を受けてBCPを策定しておけばよかったと感じたか尋ねたところ、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」を合わせて82.6%と、BCP未策定企業のほとんどが新型コロナを機にBCP対策の必要性を感じたようだ。
今後、どんなリスクに対してBCP対策が必要だと思うか尋ねたところ、「パンデミック(インフルエンザ、新型ウイルス等)」が87.0%で最多、「自然災害(地震、水害等)」は86.6%と、微妙な差ではありながら断トツだった自然災害を感染症対策が抜く結果になった。今後は、このような感染症が5年おきに発生する、とする専門家もいるくらい、ある意味でパンデミックは、自然災害と同じように普通のことだと認識した方が良いだろう。
では、これまでの自然災害と違い、感染症対策を見据えた場合に有効となるBCP施策はどういったものなのだろうか?
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