BCP、本当に十分? 調査で読み解く、コロナ禍で浮かんだ課題と今後:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。コロナ禍で注目度が高まるBCPだが、調査で見えた現状と課題とは?
BCP策定済みの企業に、コロナ禍で役立ったBCP対策を尋ねたところ、「テレワーク制度の整備」が51.2%で最多、「従業員の安否確認手段の確立」が36.9%、「緊急時の指揮命令系統の確立」が35.7%と続いた。
一方、新型コロナウイルス感染症拡大に際して「やっておけばよかった」と思うBCP対策について尋ねたところ、「テレワーク制度の整備」が66.4%で最多、「情報の電子化(ペーパーレス化等)」が57.8%、「業務システムのクラウド化」が43.8%と続いた。
DXは「効率化」だけではない
今回のパンデミックにおいては、何より在宅勤務が必要であった。人との接触を回避する手段として、出社せずに事業継続するには在宅勤務しかない。いろいろと取材して感じるところは、今回、在宅勤務にすんなり入れたところは、日頃からITを使いこなして、そもそもペーパーレスという環境下で仕事をしていた企業と、在宅勤務をBCPの一環として、日頃から訓練していた企業である。一方、介護や育児への対応のために一定の条件の従業員だけが使える制度として在宅勤務制度があった企業は、なかなか苦労したようであった。
今回の調査では、自然災害、パンデミック含め、どこでも仕事ができる状態を構築しておくことが、企業継続に欠かせないことが明確になった。デジタルトランスフォーメーションが声高に叫ばれ、日本国政府も脱ハンコ含め、DXの推進に本気になってきている。今までなかなか進まなかったわが国のDXを進めれば進めるほど、災害に強い国、企業が構築されていくと思われる。仕事の効率化、生産性向上もさることながら、DXの推進が、「災害に強い企業」を作ることを考えれば、攻めと守りの両面からDXを推し進めていく必要が明確となったのが、今回のコロナ禍といえるのではなかろうか。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター)
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