金融機関の「顧客本位の業務運営」、顧客の5%しか活用せず 生かすための方法は?
金融庁が3年前に提言した「顧客本位の業務運営の原則」。採択している事業者の数は増えてきており、その数は2019年6月末時点で1679だが、原則の採択が目的化しているのではないかという懸念もある。
金融庁が3年前に提言した「顧客本位の業務運営の原則」(以下、原則)。これは、国民が安心して金融商品やサービスの提供を受けるために、金融機関が自主的に方針を定めるように促したものだ。
「原則」を採択している事業者の数は増えてきており、その数は2019年6月末時点で1679。さらに、顧客ごとの運用損益や商品のコスト、リターンなどを数字で表す共通KPI、また金融機関が独自に設定する自主的KPIを公表する事業者も増加してきている。
しかしその効果はまだ限定的だ。
「金融機関の取組方針やKPIについて『知っている』顧客は3割程度、さらに金融商品の購入時にそれを参考にしている人は、そのうちの2割。全体の5〜6%くらいにしか訴求できていない」。想研が11月10日に開催した「日本IFAフォーラム」の基調講演で、金融庁の太田原和房氏(企画市場局市場課長)はこう話した。
「顧客本位の業務運営の原則」はルールではなくあるべき姿
そもそも、「原則」はルールではなくあるべき姿を示したものだ。各金融機関が、自主的にあるべき姿を定め、守ることで、高みを目指すという発想から始まっている。
原則を採択している事業者の数は増えているものの、「内容を見ると、原則をコピペ、または若干修正の上で採択しているものも多い。原則の採択が目的化しているのではないかという懸念もある」と、太田原氏は危惧する。
顧客側による原則の活用も進んでいない。顧客が、事業者側の取り組みを知ることで選別を行い、それによってさらに顧客サービスが向上するという好循環を目指すのが本来の狙いだが、先のように5〜6%程度しか、「原則」を判断の参考にしていないからだ。
こうした状況を踏まえ、金融庁では「原則」に注記を追加し、望ましいと考える目線を示した。
- 顧客のライフプランを踏まえて提案を行うこと
- 提案は、保険、投資信託、外貨預金など業法の枠を超えて類似商品や代替商品と比較しながら行うこと
- 販売後、適切なフォローアップを行うこと
さらに顧客への情報提供の方法として、簡潔な「重要情報シート」を使うことが望ましいとした。フォーマットの例も挙げている。「欧米の事例でも、米国でも2枚、欧州でも3枚の簡便な資料を使う流れになっている。リスク、費用、利益相反についての記述が重要点だ」(太田原氏)
また、昨今増加しているIFA(独立系金融アドバイザー)に向けて、太田原氏は「顧客目線で金融商品を比較するにあたっては、顧客の側に立ったアドバイザーの役割も重要」と期待を寄せた。
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