ウーバーイーツでトラブル頻発、配達員を雇っているのは注文した客?:専門家のイロメガネ(1/3 ページ)
ウーバーイーツは近年始まったばかりのサービスだが、たびたびトラブルが話題になっては悪評を振りまいている。特にトラブルを起こしているのが配達員だが、その契約形態は独特だ。ウーバーイーツと配達員の契約はどのような内容になっているのか。多数の消費者トラブルに対応してきた司法書士として、頻発するウーバーイーツのトラブルについて考えてみたい。
先日、ウーバーイーツの配達員に追突された女性が賠償を求めてウーバージャパンを提訴したと報じられた。
衝突されたという被害者女性は、配達員がウーバーの事実上の指揮監督関係にあるとして、配達員に加えて同社にも事故の責任があると主張している。ウーバー側はこの訴訟に対して争う姿勢を示しているようだ。
ウーバーイーツは近年始まったばかりのサービスだが、たびたびトラブルが話題になっては悪評を振りまいている。特にトラブルを起こしているのが配達員だが、その契約形態は独特だ。ウーバーイーツと配達員の契約はどのような内容になっているのか。多数の消費者トラブルに対応してきた司法書士として、頻発するウーバーイーツのトラブルについて考えてみたい。
配達員を雇っているのはウーバーイーツではなく注文した客?
ウーバーイーツが登場する前は、例えばラーメン屋に配達を依頼すると、配達に来るのはラーメン屋の従業員だった。配達途中で事故が起これば、従業員と雇用主であるラーメン屋も責任を負う。自分の展開する事業で雇った従業員が事故を起こせば責任を負うという、「使用者責任」といわれるものだ。
ウーバーイーツを利用して飲食店に配達を頼むと、形からすればラーメン屋に配達を依頼するのと何も変わらないようにみえるが、ウーバーイーツの契約形態は全く異なるものだ。
ウーバーイーツの規約を読んでみると、このような記載がある。
貴殿は、Uberがデリバリー等サービスを提供するものではなく、全ての当該デリバリー等サービスはUber又はその関連会社により雇用されていない独立した第三者の契約者により提供されることを了承することとします。
要は、飲食店の配送については、注文者とドライバーの間で契約されるもので、ウーバーイーツとしては、注文者と飲食店とを配送サービスでつなぐ「場の提供」をしただけですよ、ということになる。
この規約からすると、「注文した客」はドライバーに委託をした者としての責任を負うことになるのだろうかという疑問がでてくる。
取引の場所を提供するビジネス、といえばヤフオクのようなネットオークションや、最近ではキッズラインのようなベビーシッターや家事代行もある。一昔前には「出会い系サイト」と呼ばれていた人と人をつなげるマッチングアプリも、最近では人気が高いものだと数百万人も登録している盛況ぶりだ。
このようなサービスはネットビジネスとしてもはや珍しくない。ITで取引をローコストかつ円滑にマッチングできる仕組みは消費者にとって便利な仕組みだが、いざトラブル発生となればどうなるか。上記のようなマッチングを目的としたサービスも、ウーバーイーツ同様トラブルとは無縁ではない。むしろトラブルが起きやすいサービスだ。
特にウーバーイーツは運ばれてきた料理がメチャクチャに崩れていた、配達員が交通違反をしている、更にひどいものでは衝突事故や料理を配達先でぶちまけるといったものまで報じられ、トラブルが起きるたびにSNSで話題になる。冒頭で紹介した裁判になっているトラブルもその一つだ。
【修正:11月19日22:30 初出から注文者とドライバーとの関係について表現を改めました。注文者は使用者としての責任を負わないということの解説であり、契約関係を明確にする意図はありません。】
関連記事
- コロナに苦しむ飲食店を前払いで応援する「さきめし」、そのリスクは?
コロナ禍で苦しむ飲食店に対して、料金を先払いして応援するサービス「さきめし」。苦しい時に助け合う、良い仕組みであると同時に、お金を先に払ってサービスは後で受けるという、過去にトラブルを繰り返してきた取引形態でもある。そしてこれは、資金決済法で問題となってきた、収納代行と適用除外の仕組みの良い例でもある。 - アフターコロナで問われる「雇用と外注の境界」、海外雇用の時代到来か
コロナ禍を受けた緊急事態宣言以降、働き方は大きく変化変した。リモートワークの急拡大による通勤不要を好意的に捉えた従業員も多いだろう。だが「働き方の変化」は、経営者側から見れば「雇い方の変化」となる。アフターコロナで雇用はどう変わるのか? - なぜ「原価率300%」の料理を出すのか? コロナ後の飲食店に求められる「メニューの会計力」
コロナ後の飲食店に求められるのが、メニューを会計的に見直す力「メニューの会計力」だ。この力を高めてコロナ後を乗り切っていくことが必要になる。メニューに会計的視点を取り入れて、「広告宣伝費的な視点」「接待交際費的な視点」「販売促進費的な視点」によって、話題を作り、再来店を促し、回転率を上げて来客を促し、顧客を開拓するのだ。 - 大戸屋買収の渦中に、コロワイドが「場外乱闘」に巻き込まれた理由
大戸屋ホールディングス(以下、「大戸屋」)への敵対的TOBを成功させ、ほとんどの経営陣を入れ替えると公表した外食大手コロワイドが場外乱闘に巻き込まれている。デイリー新潮が7月に公開した「コロワイドは債務超過に陥りかねない」という記事が原因だ。 - わたし、定時で帰れるの? 残業を強制できるラインはどこか
ドラマ『わたし、定時で帰ります。』が話題になる背景には、多くの人にとって定時で帰れず残業が当たり前の状況があります。本来、残業をせずに定時で帰っていいラインとはどこにあるのでしょうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.