コロナに苦しむ飲食店を前払いで応援する「さきめし」、そのリスクは?:専門家のイロメガネ(1/4 ページ)
コロナ禍で苦しむ飲食店に対して、料金を先払いして応援するサービス「さきめし」。苦しい時に助け合う、良い仕組みであると同時に、お金を先に払ってサービスは後で受けるという、過去にトラブルを繰り返してきた取引形態でもある。そしてこれは、資金決済法で問題となってきた、収納代行と適用除外の仕組みの良い例でもある。
3月から「さきめし」というサービスがスタートした。これは、他人に食事をご馳走できるスマートフォンのアプリ「ごちめし」の新機能で、登録された飲食店とメニューを選んで、その料金を事前に料金を払うものだ。
新型コロナウィルスの影響で、飲食店が大規模な営業自粛に追い込まれるなか、利用者がいきつけの飲食店に先払いをすることで応援するという、ユニークな仕掛けだ。つまり「さきめし」は、売上が急減して苦しい飲食店と、それを応援したい顧客、双方のニーズが合致しているサービスだといえる。
同様の取り組みは他社も行っており、個々のお店が独自に行うケースもある。中には多額の売り上げが発生しているケースもあるようだ。各種メディアで度々報じられ、SNSなどでも話題になっていることからすでに知っていた人、中にはお金を払った人もいるだろう。
これは、苦しいときに助け合う良い仕組みであると同時に、お金を先に払ってサービスは後で受けるという、過去にトラブルを繰り返してきた取引形態でもある。その意義は認めつつ、多数の消費者トラブルに関わってきた司法書士の立場から、リスクと問題点を考えてみたい。
「さきめし」に感じる危うさとは?
「さきめし」の仕組みでは、利用者が支払いをする際に一定の手数料を負担する一方、登録する飲食店側には利用料は発生しない。通常、飲食店情報を提供するサービスでは飲食店側が手数料を負担し、利用者は無料で利用できることが多い。これが逆なところが「さきめし」の特徴の一つだ。
この理由について「さきめし」は、
このサービスの本質は、ごちる側の感謝や応援の気持ちを、「ごちめし」の利用の際には「誰か」に贈ること、「さきめし」の利用の際には「店舗」に贈ること、ですので、贈りたい方から手数料を頂くのが適切と考えています。
と説明している。
筆者も、日ごろ利用しているスポーツジムが一時的に閉鎖されてしまっているが、これまで気持ちよく使わせてもらっていた感謝もあり、解約せずに会費を納めるようにしている。このような馴染みの店を応援したいという気持ちをシステム化した「さきめし」は、小規模な飲食店でも利用することができる素晴らしい仕組みであると思う反面、危うさを感じる点もある。
それは飲食店が倒産してしまった場合のリスクを、利用者が丸被りする点だ。
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