コロナに苦しむ飲食店を前払いで応援する「さきめし」、そのリスクは?:専門家のイロメガネ(2/4 ページ)
コロナ禍で苦しむ飲食店に対して、料金を先払いして応援するサービス「さきめし」。苦しい時に助け合う、良い仕組みであると同時に、お金を先に払ってサービスは後で受けるという、過去にトラブルを繰り返してきた取引形態でもある。そしてこれは、資金決済法で問題となってきた、収納代行と適用除外の仕組みの良い例でもある。
今回のように、飲食店が一斉に休業に追い込まるという事態に陥ることは極めてまれで、コロナウイルスの終息がいつになるのか、経済が今度どのようになっていくのか、見通しが立たない状況にある。
すでに倒産に追い込まれる企業も出始めているなか、飲食店も例外ではない。「さきめし」のQ&Aによると、飲食店が閉店した場合については次のように記載している。
お店に先払いをする仕組みですので、閉店されても返金されることはありません。
「お店への応援」の気持ちで、閉店してほしくない店舗、万が一閉店してしまっても返金を求めない気持ちになれる店舗へ「さきめし」を是非入れていただき、この苦境を乗り越える御協力をお願いします。
「さきめし」のシステムは、あくまで利用者と飲食店をつなぐ場を提供するだけで、契約自体は利用者と飲食店の間で発生するものであるから、閉店等の事態に陥ったとしても「さきめし」は一切関知せず、という立場だ。この「さきめし」のサービスは、法律的にはどうなのだろうか。
代金を前払いさせる際の規制 資金決済法
飲食店に限った話ではないが、代金を前払いさせることについては法律の規制がかかる場合がある。これは資金決済法という法律だ。商品券やお食事券、宿泊券などが対象となる。
適用を受けると、帳簿類の作成や報告義務があるほか、金融庁からの監督を受けるなど、それなりの規制を受けることになる。しかし、小規模のケースまで重い規制をかけるのは不相当だということで、例えば発行から6カ月間に限って使用できる商品券のように、短期間で使い切るものについては規制の対象外になっている。
「さきめし」のサービスが6カ月を期限としているのはそのためで、参加する飲食店に厳しい規制が及ばないように、資金決済法の適用除外のサービスであると説明されている。
この点については、一つ気になる点がある。「さきめしサービス」では、緊急事態宣言の発令された2020年4月7日より、コロナ禍の事態が終息するまでの期間は、使用期限にカウントしないとしている点だ。つまり、現時点においてさきめしサービスを利用した場合、いつまでその権利を使えるかはっきりしないことになる。
筆者は、このような取り扱いをすると、参加する飲食店が資金決済法の適用を受けることになるのではないかと考え、さきめしサービスを運営するGigi社に確認したところ、金融庁と相談をして、法の適用除外となると判断しているとの回答を得た。
改めて金融庁に確認したところ、次のような返答だった。法律は6カ月の算定を、「(先払いした権利を)使用できる期限」と規定をしている。だから、お店を閉めてしまっていて、全く「使用できなかった期間」については、6カ月の期間にカウントしないという整理もできる。そのため、一部でこのような取り扱いを認めつつも、あくまでケースバイケースという回答だった。
コロナウイルスによる非常事態下にあるとはいえ、このような取り扱いが広く認められるようになると、本来法律が規制すべきサービスが安易に広まっていくことにもなりかねないのではないか? と危惧する。利用者の立場は不安定になってしまうという点には注意が必要だろう。
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