ウーバーイーツでトラブル頻発、配達員を雇っているのは注文した客?:専門家のイロメガネ(3/3 ページ)
ウーバーイーツは近年始まったばかりのサービスだが、たびたびトラブルが話題になっては悪評を振りまいている。特にトラブルを起こしているのが配達員だが、その契約形態は独特だ。ウーバーイーツと配達員の契約はどのような内容になっているのか。多数の消費者トラブルに対応してきた司法書士として、頻発するウーバーイーツのトラブルについて考えてみたい。
マッチングサービスの運営者として求められるものとは?
似たようなサービスを展開する出前館を見ると、出前館の配達ドライバーは出前館が雇用するパート・アルバイトという位置づけになっており、誰が使用者かはっきりしている。ウーバーイーツの展開する「場の提供をしただけ」のサービスは独特なものだ。
以前、「さきめし」というアプリについて記事に書いた。「さきめし」は新型コロナウィルスの影響で飲食店が営業自粛に追い込まれるなか、利用者がいきつけの飲食店にお金を先払いして支援するユニークな仕組みだ。
「さきめし」は先払いした飲食店が閉店しても返金は保証しない。あくまで先払いした利用者の自己責任とするシステムで、これも前述の各種マッチングサービスと同じで、取引の場を提供する仕組みだ。記事では、利用者に全てのリスクを被せる運営方法は問題ではないか? と指摘した。同様の指摘はウーバーイーツにも当てはまる。
ウーバーイーツで起きているようなトラブルは、自分に全く関係ないと思っている人は多いかもしれない。しかし雇用形態や取引方法が多様化し、副業も当たり前になりつつある現在、働く側としても消費者としても無関係とはいえない状況になっている。
そして場を提供しているだけだからトラブルが起きても責任はない、というやり方ではマッチングサービスが無法地帯になることは、ネットオークションや出会い系サイトの歴史を見れば容易に想像できる。キッズラインも、過去に性犯罪を起こした人をシッターとしてマッチングさせてしまい、トラブルが発生したばかりだ。
ウーバーイーツのビジネスモデルは未完成
消費者は飲食店の利用が手軽にできる、飲食店側は自前の配達員がいなくてもデリバリーが可能になる、という仕組みでウーバーイーツは双方にとって大きなメリットを生み出すビジネスモデルだ。
その半面、配達員によるトラブルや交通事故のニュースは頻繁だ。筆者も歩道を歩いている際、ウーバーイーツの自転車ドライバーが猛スピードで筆者の体のぎりぎりをすり抜けていき、ヒヤッとしたような経験は一度や二度ではない。
これは新しいサービスだから目立っているだけと到底いえる状況ではない。愛知県警がウーバーイーツに交通ルール順守を求める要望書を送付したとも報じられおり、利用者の増加に伴ってトラブルが多発していることは間違いないだろう。
もちろん、利用者が急増していることはそれだけニーズがあることも意味している。ウーバーイーツは、新しいサービスが広く社会のインフラとして受け入れられるような仕組みも併せて作る責任があるはずだ。
マッチングサービスは問題が起きやすいからこそ安心して利用できる仕組みが必要となる。場合によっては出会い系サイトが法律で規制され、ベビーシッターのマッチングサービスも性犯罪者を排除する仕組みが求められているように、ウーバーイーツの対応次第で法的な規制を求める声が出てくるかもしれない。
交通事故となれば契約関係にない第三者まで巻き込むことになる。本訴訟を含め、ウーバーの対応を注視したい。
筆者:及川修平 司法書士
福岡市内に事務所を構える司法書士。住宅に関するトラブル相談を中心に、これまで専門家の支援を受けにくかった少額の事件に取り組む。そのほか地域で暮らす高齢者の支援も積極的に行っている。
企画協力:シェアーズカフェ・オンライン
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