莫大なカネを動かす“オンライン活動” バイデンを勝利に導いた「コロナ時代の必須戦略」とは:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
米大統領選では、バイデン陣営が大規模なオンライン戦略を実施し、勝利の大きな要素となった。支援者を動かし、巨額の資金を集めた方法とは? コロナ禍において、企業にとってもますますオンライン活動が重要になりそうだ。
オンラインで“資金力”がどんどん上昇
ここまで見てきたようなバイデン陣営の活動は、もちろんトランプ陣営も行っている。というのも、実は16年の米大統領選でのトランプの勝利は、オンラインでの選挙活動なしには実現しなかった。オンライン選挙活動の分野では先駆者的だったバラク・オバマ元大統領のデジタル戦略とは比較にならないほど、大々的なキャンペーンをトランプは実施している。当時トランプ陣営は「プロジェクト・アラモ」というデータベースを作り上げて、有権者層にピンポイントでSNSなどを通してオンライン広告を配信し、資金集めにも乗り出していた。この戦略で有権者にメッセージを届けることで、2億5000万ドル以上の寄付を集めた。この戦略がトランプ勝利に大きく貢献したのは間違いない。
米国の大統領選では、資金が勝敗に大きな影響を及ぼす。寄付などで資金を集め、既存メディアやオンラインなどを駆使して、選挙戦を繰り広げる。筆者は今回の大統領選の間、米国に入って、ワシントンDCやその周辺州などで取材を行っていたが、テレビ番組の間のCMは、大統領選のトランプ陣営またはバイデン陣営のCMか、同時に行われた議会選候補のCMばかりだった。とんでもないカネが動くのである。
今回、バイデンはオンラインでの寄付などでトランプを圧倒し、オンライン選挙活動やメディアのCMなどでも優位に選挙戦を進めていた。選挙直前の10月には、1日で2000万ドル以上の寄付を得る日もあったほど、オンラインでのキャンペーンがとてつもない勢いになっていた。
実はもともと、選挙戦序盤には、バイデン側は資金が集まらなくて苦労していた。長い選挙戦を勝ち抜くためのキャッシュ(現金)が少なかったためだ。事実、出馬を表明した19年5月以降、一向に資金が集まらずにオンラインでの選挙活動を停止せざるを得ないところまでいっていた。
バイデン陣営は当初、デジタル分野は非常に弱く、トランプには太刀打ちできないレベルだと見られていた。トランプ陣営は保守や極右のラジオショーの論客などがトランプの主張をどんどん拡散してくれることが強みの一つになっていたのだが、バイデン陣営は、トランプのそうした戦略を分析。新型コロナに対して慎重な姿勢を打ち出していたこともあり、早々にオンライン戦略を切り替え、徹底強化した。
そして、3月に20人ほどしかいなかったオンライン戦略スタッフの大幅増員を決めて突き進んだ。民主党の指名候補争いをしたカマラ・ハリス上院議員やバーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員など、敵陣営にいた有能なオンライン戦略スタッフなども雇い入れて、9月の段階では、オンラインのスタッフは200人を超える規模になった。10月末までには20万人のボランティアがオンラインのキャンペーンに協力していた。
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