耳を疑う、武田総務相の発言 携帯値下げ「メインブランド以外は意味なし」指摘への戸惑い:本田雅一の時事想々(3/4 ページ)
携帯電話料金の値下げを巡って、武田総務大臣が「メインブランドについては新しいプランが発表されていない。これは問題だ」と発言したが、筆者は市場競争を阻害することになると指摘。どういうことかというと……。
競争環境の整備と官民統制の違い、その先にあるもの
ネットワークを構築する立場のMNO(携帯電話事業者)と、ネットワークを借りて格安SIMなどを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)では立場が違うが、両者が提供してきたサービスの違いは、それぞれの役割の違いがもたらしている部分が大きい。
MNOは割り当てられた電波帯域を最大限に活用するため、全国で品質の高い携帯電話網を構築する責務がある。日本の場合、海外と比較して携帯電話事業者への電波使用料が安いといわれてきたが、各事業者が品質の競争に投資を行うことで高品質な携帯電話網が生まれていた。
これは海外の携帯電話事情に触れたことがある読者ならば、実感として持っていることだと思う。MNOは兆円単位の投資でネットワークを更新し、5G社会に向けて次の世代への投資を行っている最中でもある。
もちろん、消費者にとって携帯電話料金が生活費の中で大きいことは確かだが、それはサービス品質や内容、価格などの関係性において競争の中から生まれるべきだろう。単に「安くしろ」では、品質を落とさざるを得なくなる。そうならないためのアクションプランではなかったのか。
武田総務大臣が言及していたように、消費者が大手3社から乗り換えようとしないという現状はある。だからこそのアクションプランではないのか。もし、武田総務大臣がアクションプランを実施後、それでも競争環境が変化しないと予測しているのであれば、それは同氏が「アクションプランには意味がない」と考えているということだろうか。
競争環境の整備と官民統制は異なる。
もし政府主導で市場原理を超えて価格を統制しようとすれば、そこには小さくはないひずみが生まれる。メインブランドでの料金引き下げを政府の圧力のもとに(圧力であって市場原理が働いた結果ではない)行わせることは、数多あるMVNOのサービスメニュー作りの幅を狭め、結果的に消費者の選択肢を狭めることになるだろう。間接費用の削減やメニューの工夫、品質の制御などで低価格を実現してきたMVNOに、商売をするなと言っているようなものだ。
さらにはMNOを通じて流れるキャッシュフローが減れば、長期的には5Gインフラの構築速度や品質にマイナスの影響を与える可能性もある。
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