耳を疑う、武田総務相の発言 携帯値下げ「メインブランド以外は意味なし」指摘への戸惑い:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
携帯電話料金の値下げを巡って、武田総務大臣が「メインブランドについては新しいプランが発表されていない。これは問題だ」と発言したが、筆者は市場競争を阻害することになると指摘。どういうことかというと……。
「コロナ禍だから」は言い訳にならない
とはいえ、そうした議論はとっくの昔にやり尽くしている。だからこそ、総務省はしつこく競争環境の整備を進めてきたはずだ。武田総務大臣の発言が問題なのは、そんなとっくの昔に終わっている議論が蒸し返されていることだ。
武田氏は「羊頭狗肉」という言葉を持ち出したが、携帯電話キャリアは看板だけで”高品質”を打ち出しているわけではない。
ネットワークの品質は、各社が行ってきた投資によってのみ向上する。日本の携帯電話ネットワークが高品質なのは、携帯電話キャリア自身の努力によるところが大きい。そして、他国が産業や社会の形を新しい世代に引き上げるため、国を挙げて5Gインフラに投資しているところ、コロナ禍だからといって政府がお金の流れをせき止めては、育つものも育たなくなる。
「このコロナ禍において地域経済が低迷する中、家計の負担を考えた時、携帯電話料金の値段が下がったと、利用者が実感しなければならない」
武田総務大臣はそう話して、ソフトバンク、KDDIがサブブランドでしか割安なプランを発表していないことを批判した。消費者の方向を向いているかのように思える発言だが、政治家が目の前の数字だけを語っているようでは国は廃れる。
一方で市場を流動化させ、競争原理を最大限に高める環境を作れば、事業者それぞれが得意な領域で競争力を高めようとするだろう。
必ずしも料金の絶対金額にこだわる必要はなく、品質や機能性、コストなどさまざまな評価軸の上に、自らが提案するプランを示せばいいだけだ。流動性が高く、多様性が広がる環境を作りたいのか。それとも大手キャリアの固定化をさらに進めたいのか。
数年をかけて構築している通信インフラだけに「コロナ禍だから」は言い訳にはならない。
(本田雅一)
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