あと10年? 銀行業務を代替するDeFiに金融機関はどう取り組むべきか(2/3 ページ)
DeFi、分散型金融は2020年のホットトピックだ。一般には認知度が低いDeFiだが、海外ではサービスが大きく伸長し、日進月歩の進化を遂げている。「金融機関はビジネスモデルを大きく変えることが必要になる。トークンベースになってくる、仲介業者がいらなくなってくる」
課題は規制と技術面
為替、預金、貸付という銀行の重要業務を行えるようになってきたDeFiだが、当然そこには課題もある。auフィナンシャルホールディングスの藤井達人氏(執行役員 最高デジタル責任者 兼 Fintech企画部長)は、DeFiは規制と切っても切り離せないと話す。
「多くのサービスはKYC(本人確認)をしていないので匿名性が高い。さらに規制対象の組織が存在しない。分散型の緩いコミュニティがあるが、特定の誰かを規制対象とすることが難しい。問題が起きたときの修正や停止も非常に困難だ。システム利用にまつわるリスクはユーザーが負うので、不具合が起きても、自己責任というケースがほとんど。さらに、国境という概念がないので、規制の対象地域や領域の特定が困難になっている」
アンチマネーロンダリングの観点、またユーザー保護の観点で、従来の金融機関を対象にしていた規制のあり方はうまくいかない。
さらにDeFiの急速な盛り上がりに、技術面でも課題が見え始めた。現在のDeFiはイーサリアムという暗号資産のブロックチェーンを基盤としている。しかし、現状のイーサリアムの処理速度は秒間25件しかなく、このスピードがすでに制約になってきているからだ。
「DeFiが人気化すると、トランザクションが起きるのでネットワークが混雑して手数料が高騰する。これまで単純な送付は10円以下だったのが、DeFiの人気に伴って500円超まで上昇した」。bitFlyerの金光碧氏(トレジャリー部部長)はこう話した。
処理性能を改善する取り組みはすでに始まっている。イーサリアム2.0と呼ばれる新たな仕組みは、フェーズゼロが12月1日に開始予定。うまく行けば、新たなブロックチェーンがローンチする(イーサリアム2.0の足音 あなたが知らないブロックチェーン最前線)。ただし、段階的に移行を進めるため、「期待する性能向上が完了するのは、少なくとも2021年までかかる」(金光氏)見込みだ。
イーサリアムの人気増大と性能不足に対し、「イーサリアムキラー」としてポルカドットなど、新たな暗号資産も登場してきており、規制面での対応に目処がつかないのに対し、技術面の課題は何らかの方法で早晩解決されると見られる。
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