デジタル人材だけでは、DXは実現しない 必要不可欠「ブリッジパーソン」の育て方:連載・デジタル時代の人材マネジメント(1/3 ページ)
デジタル人材だけを獲得してもDXは実現できない。パナソニック、コニカミノルタの事例を交えながら、必要不可欠な人材「ブリッジパーソン」の育て方を解説する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためには、組織・人材戦略にもトランスフォーメーションが求められる。DXを通した顧客への提供価値を探求し実行できる“適切な人材”をどのように見極め、どのように獲得・機能させていくのかを抜本的に見直さなければならない。
DXに必要となる人材は、まずは「デジタル人材」である。デジタル人材には、ビジネスモデルや業務プロセス全体のデザイン・設計を担うビジネスデザイナーやデータサイエンティスト、ITアーキテクチャなどのビジネス系デジタル人材と、実際に手を動かしプロダクト・サービスの設計開発・構築を行うアプリケーションエンジニアなどのIT系デジタル人材が含まれる(図表1)。
これらのデジタル人材を巡っては、熾烈(しれつ)な獲得競争が起きていることは周知であろう。従来までの新卒一括採用という獲得戦略では立ち行かず、各社はアクハイア(人材獲得目的のM&A)やリファラル採用(社員紹介)、青田買いリクルーティングといった新たな獲得戦略に乗り出している。
しかしデジタル人材だけを獲得してもDXは実現できない。JUAS-NRI共同調査(※1)によれば、デジタルビジネスを推進するために必要な能力・スキルについては「事業企画力」がトップに挙げられた。デジタルビジネスにおける事業企画力を有する組織とは、デジタルの専門知識・専門スキルを持つデジタル人材と、自社のビジネスや顧客に対して専門知識や経験を持つビジネス人材が共創している動的な組織である。この共創を生むためには、この動的組織を率いるリーダーが必要だ(図表2)。
(※1)JUAS・野村総合研究所「デジタル化の取り組みに関する調査」2019年
デジタルとビジネスをつなげ、顧客に価値を提供するための先導的なリーダーを、ダイキン工業の井上礼之取締役会長(兼グローバルグループ代表執行役員)の言葉を借り、「ブリッジパーソン」と表現したい。
ブリッジパーソンに求められるのは、以下2つのスキルである。
- デジタル人材とビジネス人材をマネジメントできるスキル
- デジタルビジネス特有のスピード感を持って意思決定できるスキル
デジタルとビジネスをつなげるということは、デジタル人材とビジネス人材という特性の異なる人材を1つのチームとしてまとめ上げ、ビジネスを創り上げ、推進していくことともいえる。これはどちらが主導という形をとってもうまくいかない。
またデジタルビジネスに特有なのは、そのコンセプト設計からサービスインまでに求められるスピード感が従来とは全く異なるという点である。これまでのように「結果を確実に出せるという確信を得るまではリソースを投資しない・GOを出さない」という新規事業・業務改革の意思決定方法では、全く太刀打ちできない。適切にリスクテイクし、スピード感をもった事業推進のできるリーダーを企業の全組織に配置することが必要である。
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