FAX廃止、受付電話廃止、代表電話は外注 なぜマネーフォワードは総務部を解体したのか?:アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/3 ページ)
コロナ禍は一過性の出来事にとどまらず、企業の組織体系自体にも影響を与えてきている。リモートワークの定常化、オフィスの縮小などをよく聞くが、組織自体を変え、総務部を解体した企業がある。フィンテック企業のマネーフォワード(東京都港区)だ。
総務の知識をデータ化する
坂氏がマネーフォワードに入社したのは5年ほど前だ。当時から、総務部はなくせるのではないかという構想を持っていたという。バックオフィスの細かな業務を担うのが総務なのだから、業務を細分化すれば他の部署が担える体制にできるのではないかという考えだ。また、組織が大きくなると各部署でアシスタントを使用することから、各組織にこぼれ落ちた業務、いわゆる庶務業務を任せられるのではないかと考えた。
もともと総務部が持っていた機能を徐々に分掌し、最後に総務部自体も解体したわけだが、こうした取り組みを実現するには重要な点が2つあるという。
1つは総務部が持っている暗黙知をデータ化すること。総務担当は創業当初からずっとその役割を担ってきた人も多く、会社の生き字引になっている人もいる。「分からないことがあれば、総務の人に聞け」という具合だ。総務部を解体するには、この定型化されていない業務を、できる限りマニュアル化してデータベースに入れる必要がある。
「会社の知識を、人に頼る状態だったのが、チャットボットなどの情報共有ツールができて個人で解決できるようになってきた」と坂氏は言う。総務の元担当者には、よく相談されることをデータ化して、可視化していくことを業務ミッションに据えてきたという。
もう1つは企業文化だ。総務の業務を他部署に分掌するとなると、どうしても業務を受け取る部署からは反発がある。なぜコピー機の紙の補充をウチがやらなければいけないんだ? という話が出てくることは想像に難くない。同社では、全社最適を図ったあとに部門最適を行うという風土があり、これが部門間の対立を産まずに効率化を成し遂げられた秘けつだという。
コロナ禍で企業のDX化は、想定よりも5年早く進んだとよくいわれる。一方で、働き方が変わるとオフィスが変わり、オフィスが変わると関連する組織も変わる。今後、総務部解体までいかなくても、総務部の仕事の在り方が見直されるようになっていくのかもしれない。
関連記事
- コロナでも出社? 経理の完全リモートワークを阻む壁
コロナ禍によってリモートワークに移行した企業は数多い。緊急事態制限が解除された今も、企業の働き方は「全員出社」から「出社とリモートワーク併用」が増加している。しかし、仕事によってはなかなかリモートでの業務が難しい。代表的な職種の1つが経理だ。 - 富裕層もZoomで口説く コロナ禍の営業は“不可逆”
コロナ禍にあって営業のやり方が激変している。対面が難しくなり電話やオンラインがメインに。それは、資産額が1億円を超える、いわゆる富裕層と呼ばれる人たちに対しても同様だ。 - 営業職がwithコロナの時代を勝ち抜くには? 大きな差がつく「ビデオ商談」のノウハウ
新型コロナによる外出自粛で、営業に行けない! と困っている人も多いだろう。しかし、この1〜2カ月だけの特殊な事態なのではなく、年単位でこれが続くことを想定しながら、営業のあり方を考えなくてはいけない。 - マネーフォワードMEから確定申告可能に スマホだけでe-Tax完結、需要取り込む
マネーフォワード(東京都港区)は11月12日、家計簿ソフト「マネーフォワードME」から確定申告を可能にすると発表した。同社の「マネーフォワード クラウド確定申告」(MFクラウド確定申告)とデータを連携し、個人事業主や副業の確定申告が行える。2021年2月にはe-Tax機能をリリースし、2月からの確定申告に対応する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.