2015年7月27日以前の記事
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マツダMX-30で1800キロ走って見えたもの池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/8 ページ)

そもそもMX-30に与えられた使命は、電動化の牽引役だ。年明けにはいよいよ国内でもEVが出る。これは以前プロトタイプに乗ったが、スーパーハンドリングマシーンと呼べる出来になるはずである。次の時代に向けた実験的取り組みは、全てこのMX-30がテストベッドになる。そのクルマの基礎素養がこれだけ好もしいものであったことで、期待は高まろうというものだ。

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 Aピラーを後ろに引いた。その上でクルマ全体に躍動感を持たせ、ロングノーズを引き立てようと思えば、自ずとAピラーは後傾角を深める。当然ドライバーへの圧迫感の強い空間構成になるが、何しろ美の追求という崇高なテーマがある。弱者が八方美人を目指しても難しい。そう考えたマツダはデザインに妥協することはしなかった。

 なのでMazda3やCX-30の運転席空間は決して健康なものではないが、そこで削ったリソースはちゃんとデザインで使い切っており、差し引きで損をするようなものにはなっていない。しかし、マツダの中にも、そしてマーケットにも「何もそれだけが美ではない」と思う人がいた。そこまで精神性の高い美は求めない。影なんていらない。もっと現代的で健康な、インダストリアルデザインとしてのあり方という別のバランスポイントを求める人たちがいた。そうした第7世代デザインのバリエーションがMX-30である。


MX-30のデザインスケッチ

 MX-30に与えられた使命は、マツダの電動化を牽引(けんいん)する役目であり、そこは2020年代のインダストリーのまさに中枢でもある。新しい時代を体現するデザインは、美の源流に遡(さかのぼ)る陰影デザインとは確かに異なる価値になるはずである。

 さて、MX-30でマツダは何をやったのか? まずロングノーズ感の演出を控え目にした。Aピラーをぐっと立てて、広い空間を作り出し、ボディを緩やかな凸面によって構成した。もちろん共通する部分はある。ヘッドランプの造形はシリンダーをモチーフにしつつ、その配置が生き物の目に見えるように配置した。優しさと目力のバランスを取りつつ、明るく生活になじむ方向へ立ち位置をずらした。写真で見ると分からないが、人が立った高さから実物を見ると、米国のダッヂのチャレンジャーを彷彿(ほうふつ)とさせる力強いカッコよさがある。

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