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マツダMX-30で1800キロ走って見えたもの池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/8 ページ)

そもそもMX-30に与えられた使命は、電動化の牽引役だ。年明けにはいよいよ国内でもEVが出る。これは以前プロトタイプに乗ったが、スーパーハンドリングマシーンと呼べる出来になるはずである。次の時代に向けた実験的取り組みは、全てこのMX-30がテストベッドになる。そのクルマの基礎素養がこれだけ好もしいものであったことで、期待は高まろうというものだ。

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 パワートレインは、2.0の直噴4気筒ガソリンユニットにマイルドハイブリッドを追加したもので、これに6段ステップトルコンATが組み合わされる。変速は上手い方だ。パワーがモリモリというには程遠いが、ちゃんと余力を感じる使いやすいエンジンである。さすがにリニアリティもちゃんとしていて、「少しだけ」の力加減が不安なくできる。

 ステアリングは穏やかながらシュアなもの、裏方としていろいろやってくれているGベクタリングコントロール(GVC)のおかげもあって、手足のように自然に扱える。ちょっと頑張ったコーナリングでも全く不安はないが、クルマそのものが持つ性格はそういうことをしたくならない。のんびりコーナリングをするとクルマの動きの美しさにちゃんと感動できる。いい歳をして何だが「いまのクルマの身ごなしよかったねぇ」とか「キレイに曲がるなぁ」とか何度も独り言を言った。

 ADASの出来もなかなか良い。マツダのADASはちょっと遅れているという認識が更新された。前車追尾の加減速もステアリング補助もだいぶ良くなって、これなら十分使えるものになっている。ちなみにADASに関しては、各社この1年で出たモデルが一気に進化しており、ここを見ると、今はちょっと中古車の魅力があせて見える時期だと思う。

 MX-30は、穏やかに軽やかに鼻歌を歌いながら走っていける快適さが身上で、運転していると機嫌が良くなってくる。長距離を走って、どんどん好きになっていくタイプのクルマである。実際1800キロの行程で、何度かドライバー交代をしたのだが、疲れて交代を望んだというより、他のメンバーが運転をしたがったという面が大きい。

 乗り心地はかなり良い部類だが、唯一タイヤの踏面のしなやかさに欠ける場面は何度か感じた。ザラザラの路面になると、微細な振動が伝わってくる。クルマそのものの遮音はかなりしっかりしており、トータルでは静かなクルマなので、タイヤが変わればそこはまた変わるだろう。

 さて、欠点にも触れておく。一番気になったのはリヤシートで感じる横加速度だ。0.1Gくらい、つまり新幹線くらいの横揺れがリアでは気になる。特にステアリング補助を使っていると、直進時の当て舵(かじ)の遅れが横揺れを作り出しているように思う。不思議なことに助手席では、その横揺れはほぼ感じない。

 もうひとつは、フリースタイルドアの軋(きし)み音だ。リアドアをフロントドアが押さえ込む形になっているせいで、フロントドアの圧着が弱いことが原因だと思われるが、Bピラー上部から少々音が聞こえる。耳に近いので、目立つ。音楽でもかけてしまえば、マスキングされてしまうが、全体に静かなクルマだけに、全く気にならないかといえばうそになる。

 燃費はどうだったか? これはなかなか厳しいものがあった。トータルで13.8キロ。まあギリギリ及第点かもしれないが、ストロング・ハイブリッド車は30キロ走る時代である。SUVタイプでも20キロオーバーは固い。220キロも重くて全面投影面積も大きいハリアーのハイブリッドAWDモデルですら20キロ走ることを考えると、マイルドとはいえハイブリッドでこの燃費は普通に減点要素である。

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