地方私鉄や第三セクターのビジネスモデル探訪:車も売れば石も売る(3/4 ページ)
鉄道会社グループというと、多様な関連ビジネスを行うことで経営実績を上げる事例がよく見られる。しかし経営の厳しい地方私鉄や第三セクターは、独自のビジネスを採用し、状況を改善しているところも多い。今回は、これら独自ビジネスを行う鉄道会社を紹介する。
せんべいだけではなく、石を売る銚子電気鉄道
石を売る、といってもつげ義春のマンガのことではない。多摩川で石を売ることは難しいとは思うものの、線路の石もまた「売れるのか?」と感じてしまうが、実際に販売した鉄道会社がある。銚子電気鉄道だ。
経営の厳しい銚子電気鉄道は、以前から「ぬれ煎餅」などの食品販売に力を入れ、漬物やお菓子、ビールなどの通販事業を行っていた。もちろん、鉄道グッズなどの販売も行っている。
駅ではあえて「硬券」を売り、銚子行きの乗車券は「上り銚子(調子)」として発売し、コレクターの需要にも応えている。
そんな銚子電気鉄道は、線路の石を缶詰にして販売している。私鉄の銚子電鉄だけではなく、天竜浜名湖鉄道、真岡鐵道、えちごトキめき鉄道、若桜鉄道といった第三セクター各社が手を携えて、銚子電鉄とほか2社の石(真岡鐵道は石炭)をそれぞれ缶詰にしてセットで通販を行っているのだ。
これらの鉄道事業者は、ファンサービスに熱心で、事業のアイデアを出すことに力を入れている。
えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長は公募で就任した社長で、以前はいすみ鉄道の公募社長だったことでも知られていた。少し前に退任した天竜浜名湖鉄道の長谷川寛彦前社長は自社への誘客に熱心で、古い施設を利用したファンサービスに力を入れていた。若桜鉄道は、山田和昭元社長がマーケティングに熱心であり、退任後もその精神は生き続けている。真岡鐵道はSL運行に力を入れていた。銚子電気鉄道の竹本勝紀社長は、税理士としても活躍しており、電車の運転免許まで取得した。
経営がギリギリの鉄道事業者は、このように観光客の誘客を行うことで経営を維持してきた。そんな状況でコロナ禍が起こり、経営は厳しくなってきた。
そこで、石を売るのである。支援を求めるために、線路の石を記念グッズとして販売する。
なお、銚子電気鉄道は鉄道事業よりも菓子類の販売のほうが売上は多い。
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