コラム
地方私鉄や第三セクターのビジネスモデル探訪:車も売れば石も売る(4/4 ページ)
鉄道会社グループというと、多様な関連ビジネスを行うことで経営実績を上げる事例がよく見られる。しかし経営の厳しい地方私鉄や第三セクターは、独自のビジネスを採用し、状況を改善しているところも多い。今回は、これら独自ビジネスを行う鉄道会社を紹介する。
鉄道そのものを観光資源にする大井川鐵道
鉄道そのものを観光資源としてとらえ、乗ってもらう体験全体をメインの事業にしている鉄道会社がある。静岡県の大井川鐵道だ。
新金谷から千頭までのSL列車は人気で、ほぼ毎日運行している。大井川鐵道そのものは、JRと金谷で接続しているが、静岡や浜松方面から鉄道でやってくる利用者をメインと考えていない。だから金谷ではなく一駅乗らなければならない新金谷からSLは運行される。
そして大井川鐵道の興味深いところは、SLの運行をバスツアーと組み合わせているところだ。バスツアーの中にSL体験乗車を組み合わせ、SL牽引列車に乗ってもらうこと自体を体験として提供する、というのがこの会社のビジネスモデルである。
新金谷の駅に行くと、駅近くには大井川鐵道経営のお土産やグッズを販売する店舗があり、観光客のための施設が充実している。近くにはSLの転車台もある。ツアーの場合は、片道だけSL牽引列車に乗車し、その間バスは回送というシステムをとっている。
さらには普通のSLだけではなく、「きかんしゃトーマス」のSLも走らせ、子どもたちに人気だ。つまり大井川鐵道の売上の多くは、SL運行によるものなのである。
このように、それぞれの地域や企業ごとに、鉄道事業のあり方はさまざまである。だがいずれも、鉄道があってこそのビジネスといえるのではないだろうか。
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