焼肉業界で「大豆ミート」が主流になる、これだけの理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
外食産業が苦戦する中、「焼肉」が健闘している。カルビやハラミなどを好む人が多いだろうが、近い将来、肉を食べることができない日がやって来るかもしれないのだ。どういうことかというと……。
大豆を用いた代替肉を販売
12月14日、未来の日本人が過去を振り返った際に、「ああ、あそこが日本の焼肉を変えたターニングポイントだったのね」と思うかもしれないような、エポックメイキングな出来事が起きた。
1人1台の無煙ロースターを設置した「おひとりさま焼肉」で人気の「焼肉ライク」が全国49店舗(2020年12月7日時点)で、大豆を用いた代替肉「NEXTカルビ」(50g:290円税別)、「NEXTハラミ」(50g:310円税別)の販売をスタートさせたのだ。
実はこの「NEXTカルビ」と「NEXTハラミ」は、11月1日から一部店舗でトライアル的に販売していて、想定以上の反響があったことから全店舗で販売することになったという。焼肉ライクによれば、このような「大豆ミート」を焼肉店で提供しているのは「日本初」ということらしい。つまり、全店舗販売は、これから始まるであろう、日本の「大豆ミート焼肉」の記念すべき第一歩ということなのだ。
という話を聞いても、消費者からは「ふーん、まあ健康志向のベジタリアンとか、朝からスムージーとか飲んじゃうような意識高い系の女子にとっては耳寄りな話なのかもしれないけれど、オレはまったく興味ないね」という声も挙がるかもしれない。焼肉といえば、脂が乗り切ったカルビにライスだろ、とか、ビールにネギタン塩だろという焼肉ファンからすれば、大豆ミートなど邪道も邪道、おそらく一生注文することはないと思っているだろう。
週に一度はカルビを食べないと体調が悪くなる筆者も、個人的には、まったく同感だ。ただ、残念ながら近い将来、飲食店側も「大豆ミート」の存在を無視できなくなってしまうかもしれないのだ。
「そらきた、欧米かぶれめ! 例のビーガンとかベジタリアンとかそういうやつだな!」と敵意をむき出しにする方もいらっしゃるかもしれない。確かに、欧米では健康の観点から、肉食を控えるべきだという風潮が日本よりも強い。中には、人間がさまざまな病気にかかるのは、肉食のせいだと主張する方たちもいらっしゃる。
ただ、筆者は、そういう健康イデオロギー的な観点から、「大豆ミート」の存在感が増すかもと言っているわけではなく、物理的な問題だ。われわれ日本人が今の調子で、気軽にカルビやハラミを腹一杯食べられる時代は、そう遠くない未来、終焉(しゅうえん)を迎えてしまうかもしれないのだ。
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