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ワークマンやカインズを育てた群馬発「ベイシアグループ」の正体長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

高成長を続けて注目されるワークマンやカインズ。これらの企業は「ベイシアグループ」に属する。1958年、群馬県に誕生した「いせや」はなぜここまで成長したのか。

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売上高が20年で2.5倍に

 日本経済新聞Web版が10月1日に更新したデータによれば、上場している小売企業で売上高1兆円を超えているのは6社のみである。その6社とは、イオン(8.6兆円)、セブン&アイ・ホールディングス(6.6兆円)、ファーストリテイリング(2.3兆円)、ヤマダホールディングス(1.6兆円)、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、1.3兆円)、三越伊勢丹ホールディングス(1.1兆円)だ。わずかに満たないのが、高島屋(0.9兆円)。

 なお、ファーストリテイリングはユニクロ、ヤマダホールディングスはヤマダ電機、 PPIHはドン・キホーテが、それぞれ核となる企業だ。

 ベイシアグループは、ワークマン以外は上場していない。こうして並べてみると、ドン・キホーテや三越伊勢丹のグループに匹敵し、高島屋をも凌駕する、一大流通グループだと分かる。

 ベイシアグループは、2000年の売上高が4000億円に満たなかったが、過去20年で2.5倍以上伸びている。いわば、デフレの勝ち組企業である。特に中核3社は、コロナ禍においてもそろって好調で、2桁成長も十分可能だ。

 中核3社のうち、ベイシアは食品をメインとするスーパーだ。また、ワークマンは作業服からアウトドアウェアに用途を広げた衣料品を展開している。カインズはセンスの良い住関連の商品を扱う。それぞれ「エブリデイ・ロープライス(EDLP、バーゲンに頼らないで安定価格で毎日安い)」という考えのもと、新しい生活スタイルに適合した“衣食住”の勝ち組企業と目されている。

呉服商で修業後に「いせや」を開業

 グループの創業者でベイシア会長、土屋嘉雄氏は埼玉県北部にある深谷市の出身。深谷は、21年のNHK大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公で、近代日本経済の父と呼ばれる渋沢栄一の故郷。名産の深谷ネギでも知られている。利根川の向こう岸が伊勢崎であり、群馬県とのつながりが深い。

 土屋氏は江戸時代から続く呉服店の次男として生まれ、地元の高校を卒業後、群馬県高崎市の呉服商「藤五」で修業。独立して開業したのが、いせやであった。


創業時のいせや(提供:ベイシアグループ)

 その頃は高度成長期で、呉服屋から百貨店に発展した三越、高島屋、松坂屋などが興隆していた。また、ダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ(現・イオン)などのスーパーが急成長。いせやは会社設立の翌59年に伊勢崎店をオープンして以来、当初は反物を販売して和服を仕立てる生地商であった。その後、洋服を中心として既製服を販売するようになり、業態を変えていった。68年に住関連、71年には食品にも進出して、小売・流通が急成長していく潮流に乗り、衣料品全般のみならず、地域の暮らしを支える百貨店として繁栄していった。

 転機となったのが、74年の大店法(大規模小売店舗法)の施行だ。この法律は、地域の商店街が百貨店やスーパーによって廃業に追い込まれないように、店舗の規模を規制するものだった。市街地では3000平米以上(特別区、指定都市は6000平米以上)、郊外のロードサイドでは500平米以上が規制の対象となった。

 成長の限界を感じ取った土屋氏は、規模を追求するのではなく、分野ごとに特化した専門店をつくり、各自が業界トップを目指す方向に舵を切った。

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