コロナ禍でも絶好調の「焼肉きんぐ」 強さを支える「カルビ」と「包み込み戦略」とは:飲食店を科学する(4/5 ページ)
コロナ禍で飲食店が苦戦している。一方、「焼肉きんぐ」の既存店売上高は前年対比123.3%と好調。強さの秘密を分析した結果は?
シェア理論から焼肉きんぐの強さを分析する
ここで「業態マーケットシェア理論」について説明します。この理論は、当社のコンサルタントがご支援先の新店舗の売上予測や立地診断等にも活用しています。
<業態マーケットシェア理論の考え方>
店舗年商(焼肉A店年商1億円)÷商圏内の特定業態の総売上(焼肉業態の総売上10億円)=業態マーケットシェア率(焼肉A店のシェア率10%)
さらに分かりやすいように、今回私が訪れた神奈川県の焼肉きんぐの店舗を例にとって説明します。
<商圏人口を調べる>
まずは、焼肉店の商圏人口を調べましょう。エリアや競合店の状況にもよりますが、郊外店の場合は既存顧客の80%が住んでいる近隣地域となります。今回訪問した焼肉きんぐの商圏人口(夜間人口)は約18万人です。
<商圏内の焼肉店の総売上を算出する>
商圏内の焼肉店の総売上を算出する上では「業態マーケットサイズ」という考え方を活用します。これは特定業態(焼肉業態)の国内市場における総売上を、日本の総人口で割って算出します。
〈マーケットサイズを算出する〉
焼肉業態における国内市場の総売上「5550億円」(18年度)÷日本の総人口「1億2427万1318人」=業態マーケットサイズ「4466円」
つまり、日本国内に住む人は平均して1年間に焼肉屋さんで4466円を使っている計算になります。
今回の焼肉きんぐのお店の商圏人口は18万人でしたので、そこに当てはめて考えてみます。
〈商圏内のマーケットサイズを算出する〉
商圏内の焼肉店の総売上=焼肉業態のマーケットサイズ4466円×商圏人口18万人=約8億円
つまり、この商圏内には年間約8億円の焼肉マーケットがあり、商圏内の焼肉店で奪い合っていることになります。
〈焼肉きんぐの業態マーケットシェア率を算出する〉
次に、商圏内における競合焼肉店の店舗数を数えていきます。この商圏内の焼肉店の数は13店舗でした。単純に年間8億円の焼肉マーケットを13店舗で分け合っている場合は、1店舗の年商は8億円÷13店舗=6200万円となります。
一方で焼肉きんぐの売上高ですが、同社の決算資料を分析していくと、直営店の平均年商は2.1億円。仮に今回訪問した焼肉きんぐの年商も同社平均の2.1億円とした場合、焼肉きんぐの商圏内におけるマーケットシェア率は、店舗年商2.1億円÷商圏内の焼肉業態の総売上8億円=26%となります。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「かつや」のシェアは60%も!? コロナ禍に負けず、とんかつ・かつ丼市場で圧倒的強さを誇る秘密とは
コロナ禍で多くの外食企業が苦戦している。一方で「かつや」は大健闘しており、筆者の試算ではとんかつ・かつ丼市場におけるシェアが6割近くにもなるという。その強さの秘密とは? - 松屋の魅力は券売機!? 人手不足時代に吉野家とすき家が導入しない理由とは
大手牛丼チェーン3社のうち券売機を導入しているのは松屋だけだ。生産性向上の切り札である券売機を吉野家とすき家は導入していない。各社に見解を聞いてみた。 - 「どさん子ラーメン」は今…… 急成長から衰退までの経緯と復活のシナリオに迫る
札幌みそラーメンの“伝道師”として急成長した「どさん子ラーメン」。かつては1000店以上を展開していたが、マネされるのも早かった。“衰退”したと思われている一方で、復活に向けた動きもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.