「売らなくてもいい」「体験の場を提供」 4カ月で560万の“接点”を生んだ店「b8ta」はリテールの価値を変えるか:すでに170社以上が出品(2/4 ページ)
2020年8月に日本進出した体験型店舗「b8ta(ベータ)」。オープンから4カ月間、2店舗で累計約560万の“商品と客の接点”が生まれた。販売ではなく、新しい発見や体験を提供する店づくりとは? 企業にとっては他では得られない“客の声”が集まる利点もある。
販売よりも「新たな発見」が生まれる店づくり
有楽町の店舗に一歩入ると、さまざまなアイテムが、製品情報などを閲覧できるタブレット端末と共にずらっと並ぶ光景が目に入る。ミニロボットや望遠鏡型カメラ、デジタル文具、折り畳み式電動自転車など、大手企業からスタートアップまで、幅広い企業や分野の最新製品を実際に触って試すことができる空間になっている。
b8taの店舗づくりについて、ベータ・ジャパンのカントリーマネージャー、北川卓司氏は「販売を主な目的としていない」と話す。気に入ったものがあればその場で購入することも可能だが、あくまで消費者の“新たな発見”を促すことに重きを置いている。
北川氏は「ECでは欲しいものを探して購入するため、興味がなかったり知らなかったりするものは見つけてもらえない。いろんな製品を同じ空間に並べることで、偶然の出会いや新しいものを手に取る機会をつくっている。出店企業にとっては、メインターゲットとは異なる層にも知ってもらう機会が増える」と説明する。
そのため、店舗運営で重視するデータは販売金額ではない。来店客が製品と“接点を持った数”などを企業にフィードバックしているという。全体の実績をみると、各商品の前を通った人数を示すインプレッションは、11月末までの4カ月間で、有楽町店で累計約340万、新宿店で約229万。消費者が商品を目にしたり触ったりする機会がそれだけ生まれていたということだ。
“体験”を重視したコンセプトを統一させるため、製品を置く区画には価格表示やポップなどはない。「基本的に、商品とタブレットのみを置いてもらい、情報量を増やさないようにしている」(北川氏)。ただアイテムを陳列するだけでなく、b8taのブランドとして統一感を持たせた。什器も米国と同じものを使用しているという。
半個室となっているエクスペリエンスルームは、出店企業がより自由に空間づくりができる区画となっている。有楽町の店舗の取材時はホームセンター大手のカインズと、コーヒーメーカーのネスレネスプレッソが出店していた。区画内で映像を流したり、試飲などの体験機会を提供したりと、ブランドに合った運営ができる。一方、イベントスペースは1週間単位で契約可能で、ロボットなどを実際に動かして体験してもらうイベントに活用することを想定している。
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