「買うのはネット、お店は経験の場」 激動の小売業界 “売らない”戦略で売り上げアップの謎:FABRIC TOKYO×丸井グループ(1/2 ページ)
「売らない」戦略を取ることで売り上げの伸ばす企業が出てきている。FABRIC TOKYOでは店舗スタッフに売り上げノルマを課していないが、売り上げが毎年200%成長。丸井グループも同様の戦略を推し進める。小売りとECの境界がなくなる中で、「D2C」が注目を集めている。
「売らない小売り」が増えてきている。オーダーメイドスーツを販売するFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ、東京都渋谷区)は、全国16あるリアル店舗で働く店員に売り上げノルマを課していない。同社は「スマートオーダー」という形でスーツを販売する。事前にユーザーが店舗で身体計測したデータをクラウド上に保管。家に帰ってからでも、数カ月後にでも、好きなタイミングで、サイト上からスーツを購入できる。
同社が重視するのは「ユーザーのライフスタイルに寄り添うこと」だ。したがって、店舗スタッフには即時的な売り上げの数字ではなく、リピート率やユーザーデータの収集といったものを求める。なお、集めるのは身体データだけではない。ユーザーの趣味や趣向、また、「タイトめな着こなしが好き」「長めの服が好き」といった情報までを集積している。これまでに集めたデータは10万件以上。これらのデータを駆使し、ユーザーのリピート率は業界平均の1.5〜2倍程度だという。また、売り上げは2017年から19年まで3期連続で200%成長。「売らない」ことが売り上げにつながっているのだ(関連記事:オーダースーツで3年連続200%成長を続けるFABRIC TOKYO 大企業キラーの裏に「D2C」モデル)。
同社の森社長は、「リアル店舗はかつて『売り場』だった。ECなどの『買う』選択肢が増えている中で、リアル店舗で買わなくても良いという提案も重要では」と話す。
「売らない」選択は、社員の働き方改革にもつながっている。同社の店舗スタッフは60人ほどいるが、この1年で離職したのは「1人いるか、いないか」(森氏)とのこと。「ノルマに追われることから解放され、やりがいをもって仕事に取り組んでもらえている」と同氏は話す。
こうした戦略に共鳴し、アパレル小売り大手の丸井グループは5月、ファブリックトウキョウと資本業務提携を締結。これに伴い、ファブリックトウキョウは丸井から数10億円規模の資金調達を実施している。9月26日に開かれたファブリックトウキョウの新サービス発表会件には丸井の青井社長も登壇し、ファブリックトウキョウの森氏とトークセッションを行った。
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