オーダースーツで3年連続200%成長を続けるFABRIC TOKYO 大企業キラーの裏に「D2C」モデル:リピート率は業界平均の1.5倍(1/3 ページ)
オーダーメイドスーツを手掛けるFABRIC TOKYOが新たなビジネスモデルを展開する。同社はB2Cモデルを武器に成長を続けている。新たにAppleも展開する「RaaS」モデルを掲げ、サブスクリプションやサーキュラーエコノミー、スマートファクトリー構想などを発表。
「店舗スタッフには毎日の売り上げノルマを課していない」――。オーダースーツを販売するFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ、東京都渋谷区)は、「Fit Your Life」をコンセプトに掲げ2012年に設立(設立時の社名はライフスタイルデザイン)。14年にオーダースーツを販売するサービス「FABRIC TOKYO」の前身となる「LaFabrics」を開始した。お客は店舗へ行き、サイズを測定。データはクラウド上に保存され、いつでも参照できる。店頭でスーツを購入する必要はなく、その日に家に帰った後、あるいは数カ月後にでも、いつでも好きなタイミングでサイトから注文できる。
同サービスは開始以来、若年層の男性を中心に支持を拡大。売上高は17年から19年にかけて、3期連続で200%の成長を続けている。店舗の「坪当たり売り上げ」も、同業他社と比較して3倍超を誇る。単に身体情報を測定してスーツをデザインするのではなく、ユーザーの趣味・趣向などのデータも収集し、これまでに集積したパーソナルデータは10万件以上。こうした「ライフスタイルをデザインする」(森代表取締役)モデルがリピーターの獲得にもつながっており、「リピート率は業界平均の1.5〜2倍」(同氏)という。
ファブリックトウキョウのこうしたビジネスモデルは「D2C(Direct to Consumer、DTC、DtoC)」と呼ばれるものだ。森氏によると、D2Cはデジタルとデータドリブンによって「最もお客さまと近い距離感でブランド運営ができる」(同氏)とされる。具体的には、自社の商品をECサイトなど自社チャネルで販売するモデルを指す。自社のブランドビジョンなどをユーザーに直接伝えられるだけでなく、ユーザーデータの分析・収集を通して商品開発に生かすこともできる。
海外ではこのD2Cモデルを通して、企業価値が10億ドル以上ある未上場企業を指す「ユニコーン企業」が続々登場しているという。創業から数年で年商が数百億円規模にまで成長する企業も多く、ベンチャー企業の新たな潮流となり始めている。
森氏は、D2Cの代表的な例として、米国のマットレス市場を例に挙げた。18年10月、米国のマットレス小売り大手で国内に3000店舗ほどを展開する「Mattress Firm」が破産申請をした。この背景には、D2Cモデルで成長を続けるベンチャー「Casper」の存在があるという。
Casperは14年に設立。商品に10年保証を付けたり、100日間のトライアルを設けたりしてユーザーの購入に関するハードルを下げた。また、ユーザーからのフィードバックを取り入れ、商品の改善サイクルを構築。設立初年度は売り上げ1億円だったのが2年目には100億円、4年目には400億円と急成長を続けている。このように、D2Cモデルはベンチャー企業が“ジャイアントキリング”できる可能性をも秘めているのだ。同氏は「こうしたモデルを生かし、弊社も10年くらいで業界トップクラスになれるはず」と話す。
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