「売らなくてもいい」「体験の場を提供」 4カ月で560万の“接点”を生んだ店「b8ta」はリテールの価値を変えるか:すでに170社以上が出品(3/4 ページ)
2020年8月に日本進出した体験型店舗「b8ta(ベータ)」。オープンから4カ月間、2店舗で累計約560万の“商品と客の接点”が生まれた。販売ではなく、新しい発見や体験を提供する店づくりとは? 企業にとっては他では得られない“客の声”が集まる利点もある。
「購入しない」声が集まるメリット
出店企業からの反響や効果も、一般的な小売店とは大きく異なる。北川氏は「企業から総じて聞くのが『定量的なデータだけでなく、定性的な“声”を得られるメリットがある』という意見だ」と話す。
その中でも、特に企業が重宝しているのが、製品を「購入しない」理由。何回も同じ製品を店に見に来ていて、製品を気に入っている様子だとしても、購入していないケースもある。b8taでは、スタッフがコミュニケーションをとることで、客が考えていることを聞く。そうすると、価格だけでなく、住環境やペットなど、実際の自分の生活に製品が関わってくることをイメージした上での「購入しない」理由が見えてくることがあるという。接客のないECや、販売につなげることを意識せざるを得ない量販店ではなかなか得られない情報だ。
そういった来店客の反応や声は、b8taが構築しているプラットフォームに集約した上で各企業にフィードバックする。企業は、生活に寄り添った情報や細かなニーズを把握することで、製品の開発や改良のきっかけを見つける可能性を広げることができる。
そのサービスのために重要な役割を果たしているのが、店舗のスタッフだ。スタッフは「b8taテスター」と呼ばれており、事前に商品説明などのトレーニングを受けた上で店舗に配属されている。現在、各店舗8人前後のb8taテスターがいる。
通常の小売店であれば、店員が販売した金額が重要な指標になるが、b8taテスターの場合は販売金額では評価されない。接触した客の数や、客からの声をどれだけ集めたかが重要な指標となる。そのため、「いらっしゃいませ」と言うことはなく、「こんにちは」と声をかける。「自由に見てもらうスタンスで接客している。購入するようにプレッシャーをかけることはない。気持ちよく体験だけしてもらえる空間を作っている」と北川氏は説明する。
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