「ノックは2回」 謎マナーは本当に必要なのか:就活には黒スーツ(2/3 ページ)
年も明け本格化する新卒就活。就活には黒スーツ、ノックは3回といった「作法」を知らなければマトモな社会人には成れない! とばかりにマナー講座、「社会人の常識」講座などで言われるのですが、ホントなのでしょうか。
理系学生の就活
現実の理系トップクラスの学生採用をしている企業の方ならご存知でしょうが、こうしたトップ校の理系学生は、学部ではなく修士課程に9割が進学するため、就活は大学院生が主流になります。この時点で文系学部生のいわゆる「大学生の就活」というくくりと一緒にはできない実態があるのです。当然ながら理系トップ層の学生採用の基準で「マナー」に重きが置かれることはありません。
社会に適応できないほどの非常識な学生では論外なことはいうまでもありませんが、「ノックを2回したからトイレとビジネスの区別がつかない」と判断するような採用者は、少なくともこうした上位層学生を採用する場面では、数学的にあり得ない確率と考えるべきでしょう。ノックの回数のような枝葉末節を気にするあまり、面接をもう一回入るところからやり直すというのは非現実的であり、何より将来の幹部候補としての判断力への疑問を持たれてしまうことでしょう。
社会人を30年以上やっている私も理解しかねる謎マナー。就活だけでなく、冠婚葬祭などの普段日常的ではないシーンでの作法を説く本やサイト、マナー講師と称する人がこうした言説を振りまいています。不安につけ込むというのは言い過ぎかも知れませんが、謎マナーは社会経験の乏しい学生、特に理系や上位校文系学生には有害だといえます。それは謎マナーが正しいかどうかよりも、そうした訳のわからない情報を咀嚼するのではなく信奉してしまうような「思考」にあります。
将来の幹部候補として選考される学生が、自ら考える能力に疑問を持たれてしまうことは大きな損失です。自分を食べ物に例えると何か?のたぐいの、クイズのような無意味な質問はいまだに一部で行われています。しかしそのような採用の本質とは関係ない質問には正解などなく、単に表現力や対応力を求めるものだという仕組みを理解していることが重要です。
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