「生産性」「人材」で世界に後れ イノベーションランキングに見る、日本の深刻な位置付け:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
経済団体のリーダーたちが連呼する「イノベーション」。世界と比べると、日本は決して進んでいない。ランキングでは他の先進国に後れを取っている。特に、生産性と専門教育が弱い。世界の課題はコロナ後のイノベーション復活だが、日本にとってはチャンスにもなる。
2021年が始まった。新型コロナウイルスの蔓延で20年は未曾有の1年となったが、21年はコロナ後の世界に向けて前進できるよう願わずにいられない。
1月1日、日本の経済団体のリーダーたちが、年頭所感を発表。経団連の中西宏明会長は、21年は「各国が経済政策を総動員し、新型コロナウイルス禍を克服する年と考えている」と述べている。また、50年のカーボンニュートラル実現に向けたグリーン成長戦略について、「革新的なイノベーションを不断に創出していく必要がある」と主張した。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事はNHKのインタビューに答えて、イノベーションについて語っている。「世界経済フォーラム(ダボス会議)が掲げる2021年のテーマは『グレート・リセット』。この言葉に象徴されるように、これまでやってきた資本主義の課題を一から議論する年にしたい。2021年は日本が本気で成長していくラストチャンスです。日本にはすばらしい強みがある。それを生かして『日本みたいになりたい』という新しい経済社会を作れないか、社会を再設計するという志を持ってスタートする1年にするべきではないでしょうか。企業はイノベーションによる社会変革を引き起こす本気の覚悟が必要だと思います」
ちなみに菅義偉首相も、年頭所感で「イノベーションを目指す大胆な投資を率先して支援し、全ての政策資源を集中し、あらゆる改革を断行することで、経済社会を大きく変革し、次なる時代をリードしていきます」と述べている。
とにかく、「イノベーション」という言葉が飛び交っている。
イノベーションとは「技術革新」という意味だが、日本では便利に使われてしまっているきらいがある。イノベーションとは非常に達成が難しいものであるが、英語だけにそう聞こえない。イノベーションはゴールではなく、プロセスなのだが、そのあたりの定義が曖昧で誰にも突っ込まれない。とはいえ、耳ざわりのいい手軽な言葉である。
桜田代表幹事は、「世界経済フォーラム(ダボス会議)」のテーマを取り上げ、NHKも同フォーラムの公式サイトで書かれている21年のテーマ「グレート・リセット」というページを画像で紹介している。
だがくしくも、その同じ世界経済フォーラムの公式サイトでは、日本の「イノベーション」について耳の痛いニュースを掲載している。
関連記事
- まだまだ世界で人気? いまだに「FAX」を使い続けるワケ
新型コロナに関する保健所の対応で注目されたのが、今でもファクスを使っている実態だ。しかし、米国や欧州でもまだまだ現役で使われている。コストやビジネス文化などの理由でファクスが使いやすいという声も根強い。まだしばらく、なくなることはなさそうだ。 - スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - “世界で最も心地よい”スニーカーは、日本でも爆売れするか
「世界で最も心地よいシューズ」と評されたスニーカーブランド「オールバーズ」が日本初上陸した。環境への配慮や履き心地を追求したシューズが、なぜここまで評価されているのか。その背景には、明確なビジネス戦略があった。 - 菅政権の肝いり「デジタル庁」は中途半端で大丈夫か――電子国家・エストニアの教訓
菅新政権の目玉政策の一つが「デジタル庁」の新設。だが2021年中の設置、時限組織というのは中途半端では。平井デジタル改革相も口にするデジタル大国・エストニアの事例を見ると、便利さにはリスクも伴う。セキュリティ対策も徹底した組織運営が必要だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.