「生産性」「人材」で世界に後れ イノベーションランキングに見る、日本の深刻な位置付け:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
経済団体のリーダーたちが連呼する「イノベーション」。世界と比べると、日本は決して進んでいない。ランキングでは他の先進国に後れを取っている。特に、生産性と専門教育が弱い。世界の課題はコロナ後のイノベーション復活だが、日本にとってはチャンスにもなる。
「イノベーションが進んだ国」ランキング、日本は……
20年に掲載された「世界で最もイノベーションが進んだ国はここだ」というタイトルの記事では、米ブルームバーグが発表したイノベーションの進んだ国のランキングを紹介。それを同サイトが取り上げ、分析している。
このランキングは13年から毎年行われているもので、20年版では、ブルームバーグは世界200の国と地域の経済状況を調べた。7つのカテゴリーでそれぞれの経済を評価し、100点満点でスコアを付けている。ただ十分に経済データがない国については排除しており、最終的にランキングの対象となったのは105の国と地域になった。
7つのカテゴリーとは、R&D(研究開発)の支出、製造業の付加価値、生産性、ハイテク上場企業、高等教育の効率性、研究者、特許活動で、これらの情報が分析されている。
そして20年のランキングはこうなっている。
1位ドイツ。2位韓国。3位シンガポール。4位スイス。5位スウェーデン。6位イスラエル。7位フィンランド。8位デンマーク。9位米国。10位フランス。
ご覧の通り、日本は10位にも入っていない。ちなみに11位はオーストリアで、日本は12位だった。日本は前年9位だったが、トップ10から漏れた。
日本が特に弱いのは、生産性と高等(専門)教育の効率性だ。生産性は、60カ国中35位。高等教育の効率性は30位となっている。ちなみに生産性で世界トップは全体で16位のアイルランド。アイルランドは、よく知られている通り、英語圏であることやITインフラの整備によって米IT企業が進出するようになり、さらに法人税の低さで国外企業を優遇するなどして生産性を高めることに成功している。
高等教育の効率性では、シンガポールが1位になっている。筆者もシンガポールに暮らした経験があるが、教育制度はかなり充実しており、国民の教育水準も高い。「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」や「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」といった調査でもいつも好成績を残していることから、教育は優れていることが分かる。この調査では、年齢を問わない高等教育への進学者数や、大学の卒業率、労働者全体における教育水準、理工学部の年間卒業者数などが考慮される。
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