飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
1都3県で緊急事態宣言が発出されて、多くの飲食店が苦戦を強いられている。「一律1日6万円の協力金」がバラまかれることになったが、こうした支援金は現場で働く人たちにまで行き届いているのだろうか。答えは……。
小さい会社がチヤホヤされる背景
「小さな会社の社長さん」の多くは、会社の規模を大きくしていないことからも分かるように、事業を存続していくだけで精一杯なので、そこで働いている労働者のことまで手が回らない。
だから、小規模事業者は経営が傾けば、「景気がよくなったらまた雇うから」と真っ先にバイトやパートのクビを切る。それとまったく同じ力学が働いて、国や自治体から金銭的な支援を受けたところで、事業継続のための運転資金に突っ込んで、バイトやパートに還元しないのではないか。
「小さな会社を悪人にしやがって、オレは自分の給料がでない中でも従業員の給料だけは払い続けているぞ!」と怒る小さな会社の社長さんもいらっしゃるだろう。もちろん、世の中は広いのでそういう立派な小規模事業者もたくさんいることはよく理解している。
ただ、一方で、残念ながら日本の経営者の8割を占める小規模事業者が全体としては、国や自治体からの支援を労働者に還元しない傾向があることは、「賃金」が証明している。
実はこれまで日本の小規模事業者にはかなり「手厚い支援」がなされてきた。法人税率軽減、交際費の損金処理、設備投資に対する助成金ももらえる。リーマンショック以降は過保護さに拍車がかかって、政府が計上する中小企業・小規模事業者関係予算は毎年1700億〜1800億円程度となっている。
なぜ「小さい」というだけで、そこまでチヤホヤされてきたのか。「日本経済のため」という大義があるからだ。小規模事業者で、労働者の4分の1が働いている。つまり、ここに金を突っ込むことは労働者の賃上げにつながり、それはひいては低所得者への経済対策にもなるという考えからだ。
理にかなっていると思うかもしれない。しかし、残念ながらこの手厚い支援は、今回の「休業手当」の問題とまったく同じで、小規模事業者で働く人たちのもとに還元されていない。
関連記事
- なぜ「すしざんまい」は、マグロの初競りを自粛したのか
マグロの初競りで一昨年は3億3360万円――。驚くような落札額で世間をにぎわせてきた「すしざんまい」(運営:喜代村)が、今年のマグロ初競りを自粛した。なぜ自粛したのかというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 東京の中小企業で働く人、平均給与は?
東京に拠点を置く中小企業で働く人は、どのくらいの給与をもらっているのか。東京都調べ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.