飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
1都3県で緊急事態宣言が発出されて、多くの飲食店が苦戦を強いられている。「一律1日6万円の協力金」がバラまかれることになったが、こうした支援金は現場で働く人たちにまで行き届いているのだろうか。答えは……。
日本の労働者は、なぜ低賃金なのか
ご存じのように、日本の賃金は先進国の中でも異常なほど低い水準で定着している。大企業や中堅企業はそれなりに賃上げをしているが、日本企業の87%を占め、労働者の4分の1が働く「小さな会社」の低賃金が足を引っ張っている形なのだ。
一方、「小さな会社の社長さん」の中には高級クラブ通いや高級外車を経費扱いにして、いい暮らしをしている人も少なくない。国や自治体の支援で生活が豊かになった「小さな会社の経営者」はいても、「小さな会社で働く人」の生活はほとんどよくなっていないのだ。
「それは大企業が搾取しているからだ!」「いや、デフレが悪い」「安倍政権が悪い、いや、もっとさかのぼって小泉政権のせいだ!」など、この現象を誰かのせいにすることはいくらでもできる。が、データを見れば、もっとシンプルに「手厚い支援を、労働者ではなく自分たちの事業継続に使った」可能性のほうが高いのだ。
「中小企業白書 小規模事業者白書 2020年版」によれば、2012年から16年にかけて存続した295万社の中で、「規模変化無し」だったのは95%にあたる281万社だった。ちなみに、その中で小規模事業者は247万社である。
これだけ時代が大きく動いて、事業環境が目まぐるしく変わっていく中で、日本の小規模事業者の圧倒的多数は成長をするでもなく、衰退をするのでもなく「現状維持」している。この奇妙な現象は、国や自治体の「支援」を成長につなげて賃上げをするわけでもなく、会社の「延命」に活用しているからとしか説明できない。
つまり、日本で「労働者の低賃金」が固定化されてしまっているのは、低賃金労働者が多く働き、日本企業の8割を占める「小さな会社」が国などの支援で「現状維持」に流されていることが原因のひとつである可能性が高いのだ。
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