飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
1都3県で緊急事態宣言が発出されて、多くの飲食店が苦戦を強いられている。「一律1日6万円の協力金」がバラまかれることになったが、こうした支援金は現場で働く人たちにまで行き届いているのだろうか。答えは……。
「事業者ファースト」が引き起こす問題
こういう構造的な問題を踏まえると、事業者にさまざまな支援がなされても、アルバイトやパートの女性の7割に休業手当がもらえない現象も納得ではないか。もちろん、このような「事業者ファースト」が引き起こす問題は賃金や手当だけではない。例えば、宅配クライシスやコンビニクライシスが分かりやすい。
宅配もコンビニも、生活者のインフラを支えているという社会的意義から、政府や自治体からさまざまな優遇措置や支援を受けてきた。それによって、企業も大きく成長をした。しかし、その現場で働く人たちのもとにはその恩恵が届くことはなく、ブラックな労働環境でこき使われてきた。その「ゆがみ」が一気に噴出したのが宅配クライシスやコンビニクライシスである。
つまり、過剰な「事業者ファースト」が、過剰な「現場の疲弊」を招き、システム全体に壊滅的な損害を与えてしまったのだ。ちなみに今、これらと同じ「危機」にさらされているのが、医療だ。
多くの専門家が指摘しているように、現在の「医療崩壊」は一部の病院にコロナ患者を集中させている「偏在」によるところが大きい。一部の病院はコロナ患者が押し寄せてベッドも足りない「野戦病院」のようになっているのに、全国で10万以上ある町の小さな医院やクリニックはコロナ患者を受け入れることなく、平時と変わらぬ診療を続けているのだ。
なぜこんな「偏在」が放置されているのかというと、選挙にも大きな影響力を持つ、日本医師会に政治が「配慮」をしているからだ。この団体のことをなんとなく「医師の団体」と勘違いをしている人が多いが、そうではない。会員は約18万人いて、そのうち約8万人は小さな医院やクリニックの経営者。つまり、日本商工会議所と同じく、「小規模事業者の団体」である。
日本商工会議所が、最低賃金の引き上げに激しく抵抗をすることからも分かるように、「経営者団体」は基本的に、労働者よりも経営者の利益を守る。ご多分にもれず日本医師会も、コロナを受け入れている病院で死ぬ思いで働いている勤務医や看護師の皆さんの利益よりも、どうしても開業医の利益を優先する。
だから小さな病院でコロナ患者を受け入れさせない。コロナ対応をすると一般診療を中止せざるをえないので、小さな医院やクリニックの経営は急速に悪化してしまうからだ。
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