飲食店にバラまかれる協力金が、「現場で働く人」にまで届かないワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
1都3県で緊急事態宣言が発出されて、多くの飲食店が苦戦を強いられている。「一律1日6万円の協力金」がバラまかれることになったが、こうした支援金は現場で働く人たちにまで行き届いているのだろうか。答えは……。
新型コロナは、さまざまな問題を浮き彫りに
断っておくが、医師会の批判をしているわけではない。業界団体が会員の利益を守るために条件闘争をするのは当然だ。もちろん、地域医療を担う開業医が潰れたら、それこそ医療崩壊なので、ここにコロナ治療をさせたくない考え方もあるのだろう。
が、これまで見てきたように、今の日本で「過剰な事業者ファースト」が、「現場で働く人たち」に常軌を逸した低賃金重労働を引き起こしていることは紛れもない事実だ。コロナ以前から低賃金や長時間労働が常態化して、心身を壊す人が続出している病院の勤務医や看護師がここまで追い込まれているのも、同じような問題があるとしか思えない。
日本医師会、経団連、日本商工会議所などなど、日本は経営者の団体は吐いて捨てるほどある。しかし、労働者の団体は、連合など数えるほどしかない。だからか、日本の政策は「事業者に甘く、労働者に厳しい」ものが多いという指摘もある。
新型コロナは、われわれの社会がクサイものにフタをして、隠してきたさまざまな問題を、誰にでも分かるような形で浮き彫りにしてくる。
なぜコロナ医療の最前線で戦う人たちは低賃金重労働を強いられ、差別までされるのか。なぜ日本経済を支える小さな会社や、小さなお店で働く労働者がいつまでたっても低賃金で、休業手当さえももらえないのか。
今の日本で起きているさまざまな問題は、われわれが長い間、「現場で働く人」を軽視してきたことのツケを払わされているのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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